今回のエリクソン・フォーラムでは、5Gの基地局装置の展示に大きなスペースが割かれた。特に3.7GHz帯や4.5GHz帯などのミドルバンド向け製品では、4Gと5Gとの帯域共用、4Gから5Gへのアップグレードなどに対応できる点がアピールされた。エリクソンではスポット的にエリアをカバーする28GHz向け製品にも力を注いでいる。
エリクソンの5G基地局製品のラインナップ
もう1つ、今回エリクソンが力を注力していた展示に、AI/機械学習を活用して無線ネットワークの設計を最適化するソリューションがある。
5Gでは、基地局にアンテナと無線部だけを設置し、光ファイバーでビル内などに設置されている基地局制御装置と接続して、多数の基地局を集中制御するC-RAN構成が多用されると見られている。これにより異なる基地局間のキャリアアグリゲーションなどが柔軟に実現できるようになるが、実際に多数の基地局の複数帯域を最も効率的に利用できるように組み合わせるのは、簡単な作業ではない。
このソリューションは、無線ネットワークから、エリアのオーバラップ状況やハンドオーバーのリレーション数など様々な情報を取得し、コミュニティ・ディテクションというアルゴリズムで解析することで基地局の結び付きを数値化することで、最適な組み合わせを実現するというもの。人手で設計する場合と比べ、エリア内スループットを20%ほど改善できるケースもあるという。
エリクソンは、2017年にこの手法を用いたネットワーク設計サービスを世界で初めてソフトバンクに提供しており、ネットワークのパフォーマンスの向上とともに、納期短縮、コスト低減を可能にしたとのこと。「日本発」のソリューションが今、世界で展開されているのだ。
また、エリクソンでは、無線ネットワークの保守などでのAI/機械学習の活用にも力を入れている。障害発生時にエンジニアが対策に費やす時間を90%以上削減できるという。
AI/機械学習を用いて基地局の最適なグルーピングを行う
このほか、視線追跡技術を用いてVRの視野の中心部分だけを高解像度で処理することで、臨場感を保ちつつネットワークリソースを節約する技術、5Gの低遅延性を生かしてネットワーク上でVRの映像レンダリングを行う技術など、5Gに向けた映像サービス分野のソリューションの展示も目立った。
センサーで視線を検知。格子で示された視野の中心部分だけを高精細化することで、
帯域を節約しつつ臨場感のあるVRを実現できる
併せて行われた講演では、エリクソン・ジャパン 代表取締役社長を務める野崎哲、マイケル・エリクソンの両氏が世界市場での5Gの動向や同社の戦略を説明。マイケル・エリクソン社長は、4Gから5Gにアップデートできる基地局装置やAI/機械学習のネットワーク設計・保守への活用などを紹介したうえで、「準備は整っている。今、5Gの取り組みを開始すべきだ」と呼びかけた。