携帯電話サービスで使われているLTEを企業・団体が自営、もしくはそれに準ずる専用設備として利用する「プライベートLTE」が、グローバルで注目を集めている。
「広域エリアのカバーや低遅延性など、Wi-Fiでは対応できない要件に対応するため、プライベートLTEを導入する企業が増えている」。IT専門調査会社のIDCジャパンでグループマネージャーを務める草野賢一氏はこう指摘する。
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー 草野賢一氏
一例が、資源メジャーのリオ・ティント(Rio Tinto)だ。2014年にオーストラリアの大規模鉱山にプライベートLTEの設備を構築。重機やトラックに取り付けたカメラで撮影した映像や、位置情報などをリアルタイムで管理センターに送信し、遠隔操作や自動運転を実現している。
広大なエリアで運用されるトラックや重機からの高精細な映像送信や、自動運転や遠隔操作の用途に耐えうる高信頼性や低遅延性といった要件を、Wi-Fiで満たすことは難しい。そこでプライベートLTEを採用したのだ。草野氏によれば、「中国では、モノレールの無人運転をプライベートLTEで実現したケースもある」という。
図表1 主なプライベートLTEの導入事例
リオ・ティントは、携帯電話のインフラが整備されていないエリアの周波数の権利を通信事業者から譲り受けて、プライベートLTEを構築している。周波数オークション導入国の多くでは、電波を取得した企業が未利用の周波数の権利を他の会社に再販・貸与することが認められているため、これが可能なのだ。通信事業者と提携し、携帯電話サービスの帯域の一部を専用周波数として借りて、港湾施設などにプライベートLTEを整備するケースや、公共性の高い用途にLTEを運用できる周波数が新たに割り当てられるケースも出てきている。
ただ、こうした手法を取れる企業は限られるため、現在のところプライベートLTEの利用は、鉱業、エネルギー、交通など、一部の業種に限られている。だが、ここに来て導入企業の裾野が一気に広がる可能性が出てきた。
トリガーになると目されているのが、無線LANなどで用いられている5GHz帯などのアンライセンスバンド(免許不要帯域)を使って、手軽にプライベートLTEを構築できる「MulteFire」の登場である。ノキアが、初の商用小セル基地局装置を第2四半期から順次各国の市場に投入することを発表しており、これを契機にプライベートLTEの活用領域が大きく広がることが期待されているのだ。