Web会議とのハイブリッド運用
提案に当たって課題だったのが、「全拠点にHD対応システムを導入するのか?」ということだった。実は、イオン九州が運営する96店舗には大別して3つの形態がある。まず、GMS(General Merchandise Store)と呼ばれる大型総合スーパーで、これが45店舗ある。次に、安売りに特化したディスカウンティング&ソリューションストアであるスーパーセンターが5店舗、そして幅広い専門用品を取り揃えたホームセンター「ホームワイド」が46店舗だ。
このうちホームワイドは、GMSとは比較にならない少人数で運営しているという。このため事務所もなく、サービスカウンターの裏側に机と椅子を置いて事務所代わりに使用している。そういった環境にまで専用機を置くのは難しかった。
FJBが提案したのは、LifeSizeのテレビ会議システムとWeb会議システムのハイブリッド導入だった。GMSとスーパーセンターにはLifeSizeを導入し、ホームワイドにはWeb会議システムを導入するもので、これならPCを置くスペースさえあればよい。Web会議システムは、今回導入したMCUであるタンバーグのCodianシリーズとの親和性が良かったポリコムの「PVX」を選んだ。
このハイブリッド提案と長年イオン九州のネットワークを手掛けてきた信頼感もあり、FJBがシステムを受注した。
導入費1億円を1年で回収
新システムは2009年9月1日に運用を開始した。
図表 導入システム構成イメージ |
回線はQTNetの「BBIQ」とNTT西日本の「フレッツ光」を利用。光回線が敷設されていない4拠点はADSLだが、それ以外のLifeSize導入拠点では、HD品質のテレビ会議をストレスなく利用できている。
導入から10カ月が経過したが、定例会議はほとんどがテレビ会議に移行した。唯一、店長会議だけは岡澤社長の方針で集合会議だったが、それも今では隔月でテレビ会議でも実施するようになった。このため菅原部長は、「少なめの試算で年間1億円はコスト削減できる」と見通しを語った。この数字は、直近半年間の集合会議における出張旅費(交通費+日当)の実績をベースに試算したものであり、確実に削減が見込める金額。会議のために人が移動する時間的なロスが減る部分を、人件費ベースや業務効率向上の視点から金額換算することも可能だ。「今回のイニシャルコストは約1億円だったので、1年で回収できる計算であり、業務効率の向上を加味すればコスト面での効果は計り知れない」という。