高セキュリティを実現しているiPhone

法人ユーザーが最も気にする点は、セキュリティ面だろう。特に盗難や紛失時にiPhone内のデータがきちんと守れるのかは気になるところだ。

iPhoneは、Exchange連携をすれば遠隔からデータを消去する「リモートワイプ」機能が利用できるし、ソフトバンクBBが月額315円で提供している「リモートワイプサービス」を利用する方法もある。

また、運用・管理面でも、iPhoneには「iPhone構成ユーティリティ」という構成プロファイルの作成、保守、暗号化等を簡単にできるカスタマイズツールがある。これを利用することで、複数のiPhoneを一括で管理することができる。構成プロファイルにはデバイスのセキュリティポリシーやVPN構成情報、Exchangeアカウント設定等、iPhoneをエンタープライズシステムで使用するための証明書が含まれている。

管理機能は、「iOS 4」で今後より強化されそうだ。まず、マルチタスク機能による「動態管理ソリューション」の登場が考えられる。これまでは、アプリケーションを切り替えれば位置情報を発信できなくなっていたが、今後はバックグラウンドで位置情報を出し続けることができる。このため、配送事業者やタクシー会社などでは、車1台1台の位置を常に把握し続けることができるようになる。

また「モバイルデバイスマネジメント」も可能になる。中野担当課長によると、「企業によってはすべての端末を常に監視し、場合によっては遠隔で設定変更をしたいというニーズを持っているところもある」という。iOS 4にはこれを可能にするAPIが搭載されたため、今後このような端末管理のクラウドサービスが登場するとみられる。

このように、iPhoneやiPadは、セキュリティ要件が高いユーザーのニーズにも応えられる。ちなみにAndroid端末は、Exchange連携は可能だが、まだここまでの高いセキュリティ機能は提供できておらず、商談時にユーザーの口から「導入はまだ時期尚早」という言葉が出るケースがあるという。この点がiPhoneの2年間のアドバンテージになっているようだ。

ソフトバンクテレコム 営業推進本部 マーケティングプロモーション部 部長 中村拓博氏	ソフトバンクモバイル プロダクト・マーケティング本部 法人プロダクトサービス統括部 担当課長 中野晴義氏

新たなワークスタイルを提示

今後の拡販のキーワードについてソフトバンクは「社員の生産性向上」を挙げている。

現在、ソフトバンクテレコムが企業向けクラウドサービス「ホワイトクラウド」を提供しているが、これを活用することで、場所や時間、PCやモバイルといったデバイスにとらわれず仕事ができる新たなワークスタイル「ホワイトワークスタイル」を提唱していく。

その中心となるのが「『ホワイトクラウド』デスクトップサービス」だ。各端末にOSやアプリケーションを搭載せず、実作業をデータセンター内のサーバーで行い、ネットワーク経由でデスクトップの画像を配信するシンクライアント型のサービスである。

例えば、午前中は会社のシンクライアント端末で仕事をし、午後は外出先からiPhone等のスマートフォンからアクセスし、夜は自宅のPCからアクセスするといった業務形態も可能になる。

つまり、スマートフォンでも会社と同じPC環境が利用でき、すべては難しいかもしれないが、PCを利用した多くの業務がこなせるようになり、社員の生産性向上を実現するというわけだ。もちろん、データは端末には残らないため、紛失等があっても安心だ。

ソフトバンクテレコムでは、この5月に自社にホワイトワークスタイルを試験導入し、実際の効果を検証し始めている。

同時に「ホワイトワークスタイルオフィスツアー」を開始。ユーザーに取り組みを公開している。情報システム部の部門長を中心に、すでに相当数の企業が訪れ、見学はもちろん、積極的な意見交換も実施しているという。同社は試験導入の結果を踏まえ、9月をめどにサービス化し、企業に提供し始める予定だ。