総務省の「5G総合実証試験」において超高速通信(eMBB:エンハンスドモバイルブロードバンド)に関わる技術検討と調査を担当するドコモは「エンターテイメント」「スマートシティ/スマートエリア」「医療」の3つの応用分野について実証試験を行った。5G国際シンポジウムで同社・5G推進室主幹研究員の奥村幸彦氏が、4.5GHz帯および28GHz帯を使った複数のサービス/アプリケーションの試験結果を発表した。
NTTドコモ 5G推進室主幹研究員の奥村幸彦氏
5G総合実証試験で特徴的なのが、通信事業者や通信機器ベンダーだけでなく多様な産業界と連携して調査検討が進んでいること、そして首都圏に留まらず地方でも試験が行われていることだ。
その例としてドコモは和歌山県、和歌山県立医科大学と協力し、5Gを活用した遠隔診療の実証試験を行っている。山間部にある国保川上診療所(和歌山県日高川町)と、和歌山県立医科大学地域医療支援センター(和歌山市)を高速通信ネットワークで接続。2018年2月から3月にかけての約3週間、両所の医師が、4K映像対応のテレビ会議システムや接写カメラ等を用いて高精細な診療映像を共有し、意見交換しながら診療を行った。
実証試験の様子(地域医療支援センター側)。問診用のテレビ会議システムのほか、
患部を撮影する4K接写カメラの映像やMRI画像など、複数の映像を同時伝送しながら遠隔診療を行った
実効速度1Gbpsで複数の4K映像を伝送
同大学では従来から、県内各所の診療所に対して遠隔診療を行ってきた。今回の実証試験を行った川上診療所でもこれまでLTE回線でテレビ会議システムを運用しており、支援センターの医師が、診療所で行われる診察を遠隔からサポートしてきたという。
ただし、同診療所でのLTE回線の実効速度は1.5Mbps程度しかなく、フレッツ光などのFTTHサービスもエリア外。そのため不鮮明な映像しか送れないことが課題となっていた。
今回の実証試験はその既存の仕組みを活用しながら、5G技術をアドオンするかたちで行われた。
遠隔診療に用いたシステムの概要