ミリ波FWAシステムの実力を検証
今回の実証実験では、まずミリ波区間の特性を測定した。
ミリ波の特徴を最大限活かすため、ミリ波基地局が見通すことができる施設の屋上にCPEを設置して行った。検証環境として、基地局は地上高20m。CPEは地上高13m。基地局とCPE間の直線距離は約200mとなる。

実証実験の様子
この実験結果として、通信速度は下り最大2.38Gbps、上り最大541Mbpsと安定した高速通信の実現を確認することができた。また、CPE設置時のアンテナ向きについては、正面方向が基地局方向からずれた場合でも、±60°という広範囲にわたり、通信性能にほとんど影響がないことも確認できた(図表4)。
図表4 基地局に対するCPE 方向による受信レベル(RSRP)測定結果

ミリ波通信の大きな特徴であるビームフォーミング技術により、この柔軟性を可能にしている。基地局とCPEの双方に搭載されたアンテナでビーム方向を制御し、自動的に最適な通信経路を確保する。これにより、設置作業は非常に容易となり、現場でのアンテナ方向調整の負担を大幅に軽減している。
CPEの実力がさらに発揮されるのは地方などでの遠距離通信である。山間部で行った検証(図表5)では、ミリ波基地局から1100m離れた場所でも下り約1.8Gbps、上り約430Mbpsの高速通信が確認できた。試算では4km程度離れたLOS環境でも、下り約1.0Gbps、上り約100Mbpsの通信が可能と推定される。このような遠距離でも簡単に接続できるのは、ミリ波SAの大きなメリットである。
図表5 山間部での遠距離通信

FWA利活用シーンを想定したWi-Fi接続検証
次に、実際の利用スタイルを想定して、図表6のようにCPEと端末(PCとスマートフォン)をWi-Fiを介して接続した環境での検証を行った。
複数の端末を用いた場合の通信速度は、合計で下り約2.3Gbps、上り約500Mbpsの結果を得た。近年のWi-Fi技術の進化もあいまって、ミリ波の高速通信は、Wi-Fi接続においても最大限活かせることが確認された。
図表6 Wi-Fi を利用した検証

また、今回は導入例として、設置コストの低減を意識し、実際に横浜市内の3階建ての建物において、各階の廊下中央にWi-Fiルーターを配置して検証を行っている。
具体的には、全長100mの廊下中央にWi-Fiルーターを設置し、廊下の両端において通信速度を測定した。測定の結果、下り約1.5Gbps、上り約500Mbpsと、日常的な利用に十分な通信品質が確保できることが確認された。
このように、今回実証を実施したフロア長が約100m程度の建物では、各階にCPEとWi-Fiアクセスポイントを1セットずつ設置するだけで建物全体を効率よくエリア化することが可能となる。
CPEを利用したFWAは、施設内への設備敷設と比較して、設置の容易さという大きな利点を備えている。従来のように外部からの配線引き込みや施設内の配管工事など、大掛かりな設備工事が不要となり、その労力や施工費用を大幅に軽減できる。
図表7 屋外から屋内へのLAN ケーブル設置例

図表7は屋外から屋内へのLANケーブル設置例だ。工事期間の短縮や施工費用の軽減はもちろん、必要に応じた柔軟な設置が可能となり既存の建物への導入も容易となる。これは、FWA導入のハードルを下げ、ミリ波活用の拡大に大きく寄与するものと考えている。
今回は、ミリ波スタンドアローン(SA)構成の実力を検証するためのFWA実証実験の構成と検証結果について解説した。次回の【後編】では、FWAの性能を左右するエリアシミュレーションと、今後のFWA展開の可能性について詳しく述べる。
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今回の実証実験は横浜市内の施設で実施しました。この実証実験の実施に取り組みさせて頂きましたソフトバンク様、ならびに多大なるご支援とご協力を頂きました横浜市様に対し心より感謝申し上げます。













