我々が普段、大変便利に利用しているネット通販――。経済産業省によると、2016年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、15.1兆円となっています。2010年の市場規模は7.8兆円ですので、この6年間で1.94倍も増加しました。
図表1 BtoC-EC の市場規模および EC 化率の経年推移(出所:経済産業省 資料)
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-1.pdf
また、国土交通省によると、国内の宅配便の取扱個数は2016年度で40.2億個であり、その99%がトラックによる輸送とのこと。2010年度は32.2億個で、こちらは約25%増えています。
図表2 宅配便取扱個数の推移(出所:国土交通省資料をもとに編集部作成)
個別企業に目を移してみましょう。
ネット通販の雄といえば、誰もが認めるアマゾンですが、こちらの2016年の売上高(日本事業)は、1兆1660億円。2010年は4372億円ですので、2倍以上の成長となっています(いずれも当時の為替レートで換算)。
現在、このアマゾン(日本法人)の周りで、物流に関して、様々な問題が起きています。
たとえば、以前、アマゾンの主たる配送業者は佐川急便でしたが、アマゾンの要求する配送条件と折り合わず、佐川は2013年にアマゾンから撤退しています。その結果、佐川は一時的に取扱量を減らしたものの、利益は拡大しました。
その佐川に代わって、アマゾンの主たる配送業者となったのがヤマト運輸でしたが、こちらは取扱量は拡大するものの、利益を減らす結果となっています。低い単価、厳しい配送条件に加え、ドライバー不足も原因です。
世の中全体で求人倍率が高まっている現在、「長時間労働で低賃金」というイメージのあるドライバーに人が集まりにくいのは当然かも知れません。
運送業界全体でドライバーの取り合いとなった結果、ドライバーの人件費にも上昇圧力が働いています。しかし、それでもまだ、トラックドライバー(道路貨物運送業)の賃金は、全産業平均以下の水準です(厚生労働省のデータによる)。すぐにドライバー不足が解決する見込みはありません。
そのような中、ヤマト運輸では今年の春季労使交渉の場で、労働組合から会社側に対し、総量規制を求める申し出がなされました。「宅配便を扱う個数を制限せよ」ということです。
これを受けて、ヤマト運輸では、アマゾンを始めとする大口顧客の運賃の見直し、およびドライバーの労働条件改善に向けた諸施策の取り組みを行っています。
この9月には、「アマゾンに対する運賃を40%増とすることで交渉がまとまる」との報道もなされました。この例からも、我が国の物流・ロジスティクスの抱えている問題の一端が垣間見えるのではないでしょうか。
さらに、我が国では、これからの「少子高齢化」「生産年齢人口減少」の時代を迎え、
・さらなるドライバー不足
・ドライバーだけでなく、物流倉庫作業員の不足
・買物難民となる高齢者の増加
など、物流やロジスティクスに関わる問題が山積しています。
しかし、このような問題も、AIやロボットを始めとする最新IT技術によって解決できるはずです。
本記事では、物流・ロジスティックスの課題を解決するIT活用の将来像について、「輸送・配送の将来像」と「物流センターの将来像」に大きく分け、2回にわたり解説します。まず今回の前編では「輸送・配送の将来像」を確認します。