「100円SIM」で存在感強めるNTT Com――新技術と協業を軸にIoT新市場の創出に挑む

IoTネットワーク市場におけるNTTコミュニケーションズの存在感が高まってきている。トリガーとなったのが、同社が7月に投入した「100円SIM」だ。小容量通信にフィットした料金プランはIoT市場の裾野を大きく広げた。NTT Comは、eSIMをはじめとする新技術の活用、パートナーとの協業により新たな市場の創出に挑む。

「非常に好評をいただいており、大手企業から小規模な会社まで、様々な商談が寄せられている。すでに数万回線が稼働。1万回線を超えるような案件が数多く進行している」

NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部でMVNO事業を担当する村田一成氏は、7月に販売を開始した「100円SIM」の現状を、こう説明する。

「100円SIM」は、トラフィックが少ないIoT機器の利用を想定した料金プランで、通信量が1MB以下であれば月額料金100円(税別、以下同)で利用できる。超過料金も1MB 100円というシンプルな値付けがなされている。(NTT Com指定の25か国)

好評を得ている大きな理由の1つは、言うまでもなく、この「1MBまで100円」という価格設定にある。従来の数10MBで月額数百円といったプランでは実現できなかったユースケースが、100円SIMによって顕在化したのだ。実際、遠隔監視、子供や高齢者の見守りなど、多様な案件が寄せられているという。

NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 MVNO担当の村田一成氏(左)と青木貴史氏
NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門
MVNO担当の村田一成氏(左)と青木貴史氏

では100円SIMはどのようにして生まれたのか――。村田氏は「お客様から1MB~2MBといった少ないデータ量をもっと安く使いたいというご要望があり、個別に対応させていただいていたところ、商談がかなりの数になってきた。市場にぽっかり空いた領域があると考え、ラインナップした」と開発の経緯を説明する。低容量のIoT通信のニーズに、“月100円”というわかりやすい価格設定で応えたことが、多くの企業に支持されたのだ。

もう1つ「100円SIM」が多数の企業に支持された理由に、安価な料金設定と高い品質・セキュリティを両立させている点がある。

「100円SIM」では、NTT Comの他の料金プランと同様、モバイル回線からインターネットを経由せず、法人向けVPNサービス「Arcstar Universal One」に接続する形態がとられているため、機密性の高い企業データや個人情報のやり取りや、重要な設備の接続にも活用できる。NTT Comの「Enterprise Cloud」、マイクロソフトの「Azure」、Amazon Web Services(AWS)などのクラウドとも閉域接続が可能だ。

村田氏は「IoTのお客様には、B2B2X型で他の企業や消費者にサービスを提供される会社が多く、セキュリティに対する関心が高い。当社では接続を完全に冗長構成していることなど、従来からキャリアグレードのネットワーク品質を訴求してきたが、価格競争力が加わった事で、これが活きてくるようになった」と好評の理由を説明する。

同じくネットワークサービス部でMVNO事業を担当する青木貴史氏は「社内ネットワークであれば、万一トラブルが起きても“会社の中”の問題で済むが、ハードウェアにSIMを組み込んでユーザーに販売するようなB2B2Xモデルでは、トラブルが起きた際のサポート体制でその企業自体が評価されてしまう。それだけにネットワークへの信頼性やサポート体制が重視される」という。ビジネスモデルの変化により、高い信頼性を持つネットワークへのニーズが高まってきたというのである。

加えて、青木氏が強調するのが「実際にお客様先へ足を運んでお話をすると、100円SIMがグローバルで利用できる事に対して驚かれる方が多い」ということだ。「100円SIM」は世界25カ国で、国内と同じ料金、使い勝手で利用できる。「国内で行っている自社製品の遠隔監視などのサービスを、国内と同じSIMで設定変更も必要なく海外にも展開できる点を評価いただいたケースもある」という。

「100円SIM」のサービス利用イメージ
「100円SIM」のサービス利用イメージ

もう1つ見逃せないのが、100円SIMの展開が、NTT ComのIoT向けモバイルサービス全体の底上げにもつながっている点だ。「100円SIMをきっかけにお客様の要件をヒアリングさせていただくと、別の商材や、プランが適しているケースがある。適材適所で提案をさせていただいている」と青木氏。

その際に「NTT Comがこうした商材を持っているとは知らなかった」「規模の小さな企業にもNTT Comが親身になって対応してくれるとは思わなかった」という声を聞くこともあるという。

「100円SIMの投入により、IoTのネットワーク市場にNTT Comという選択肢を持っていただけてきたのでは」と青木氏は見る。

NTTコムは9月からモバイルネットワークのカスタマーコントロール機能を強化し、新たな料金コースの発表を行った。ポータルサイトからSIMの利用開始、休止など切り替えなどが行えるようになっただけでなく、新料金コースにより、回線を開通させた時点から通信料金が発生するといった運用ができるようになった。

NTT Comでは、IoT向け事業の次の展開に向けた準備にも動き出している。その1つに今年7月にスタートさせたMVNOでは初となるeSIMの実証実験がある。

村田氏は「今年度eSIMの実証実験をスタートさせた。グローバルIoTサービスを想定した技術検証とともに、eSIMを活用した新ビジネスの可能性の検討も今後進めて行く。MVNOがeSIMを展開することでお客様にどのようなメリットを提供できるのか、eSIMにどのような付加価値を載せられるかを考えていく必要がある」と語る。

さらにNB-IoTやLTE カテゴリM1などのIoT向けの新しい技術の導入も課題になってくると見る。「今後もサービスを磨いていかなければいけない」と村田氏は強調する。

もう1つ、村田氏が、IoTビジネスの拡大を図る上で欠かせないファクターだと考えているのが、IoTビジネスを手がけるパートナー企業との連携、「サービス共創」である。

NTT Comではパートナー企業と展示会に共同出展する取り組みも行っているが、村田氏はその狙いとして「様々な分野、さまざまな規模の企業がNTTコミュニケーションズと一緒にビジネスを展開している、できることを知っていただきたい」という。企業との連携を広げることで、IoT向け事業のさらなる飛躍が可能になると見るのである。

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