中国・上海――。ハンドルを握るドライバーが運転しているのは、30kmも離れた場所にある自動車だ。
6月28日~7月1日に開催された移動通信分野の国際イベント「Mobile World Congress Shanghai 2017」で、とりわけ多くの来場者の関心を集めていた展示が、中国移動通信とファーウェイ、現地自動車メーカーの上海汽車が共同出展した5Gによる遠隔ドライブのデモだ。
来場者は、3面のHDディスプレイに表示されたリアルタイム映像を見ながら、時速30~40kmで遠隔運転できる。振動が一切なく、加速感を感じられない点などに若干の違和感はあるものの、実際に自動車に乗って運転するのと、ほぼ変わらない感覚で運転できた。
超高速大容量、超低遅延の通信が可能な5Gにより、一歩間違えれば人命に関わる車の運転が、遠隔操作で行えるようになろうとしているのだ。ファーウェイでは、5Gの商用化が見込まれる2020年をターゲットに開発を進めているという。
中国移動通信が、ファーウェイなどとMobile World Congress Shanghaiに出展した5Gによる遠隔ドライブのデモ。1msの低遅延と99.999%の高信頼性がアピールされていた |
産業分野における5Gのユースケースの中で特に期待感の強いものに、自動車や建設機械などの遠隔操作がある。高精細な映像によって状況をリアルタイムで確認しながら、今まで人が現場で直接操作する以外になかった細かな作業も、遠隔から超低遅延で実行する。
こうした世界を実現できれば、高いスキルを持った人材をセンターに集め、複数の現場作業を効率的に行うことができる。生産性は飛躍的に向上し、危険エリアにおける作業の安全性も高まる。
建設機械大手の小松製作所(コマツ)は、NTTドコモと共同で5Gを活用した建機の遠隔制御の検討を行っている。5月には、千葉市美浜区に配置した建機を、東京ビッグサイトから5G回線を介して遠隔操縦するデモを公開した。
図表1 5Gを用いた建設機械の遠隔制御
コマツは、無人ダンプトラック運行システム(AHS)や建機の運用を自動化するICT建機を展開するなど、建設分野でのICT活用に意欲的に取り組んでいる。建機の遠隔操縦についても、すでに光回線や無線LANを使って実用化しているが、5Gを活用すれば、さらに現場の状況を細かく把握できる。また、超低遅延によって、より高精度な操縦が可能になるという。