「携帯電話事業者はこれまでスマホに向けたサービスを提供してきた。しかし、5Gになると、ヒトではなく、モノに向けたサービスになる。我々は今、IoTに注力しているが、モノをつなげるインフラとして5Gに非常に期待している」
ソフトバンクにおける5Gの位置づけについて、こう語ったのは同社で先端技術開発室 室長を務める湧川隆次氏だ。
5Gはスマホ向けサービスも進化させるが、より大きな可能性が広がっているのは、自動車やカメラ、工場、ロボット、ウェアラブルなどのIoTの世界。この日、披露された5Gのデモンストレーションも、こうしたIoTでの活用を強く意識したものだった。
ソフトバンク テクノロジーユニット 技術戦略統括 先端技術開発室 室長 湧川隆次氏
ロボットが伝送遅延2msでホッケーゲーム今回、東京臨海副都心のテレコムセンタービルで実施された5Gのデモは、4.7GHz帯の100MHz幅を用いて行われた。まず披露されたのは、ロボットアームを使ったホッケーゲームのデモ。人間と自動制御のロボットアームがホッケーゲームで対戦する。5Gの特徴の1つである超低遅延にフォーカスしたデモだ。
その概要だが、人間のプレイヤー側の上部に取り付けたカメラでパックの位置を認識して軌道計算サーバーで軌道を計算。伝送遅延2msの5Gネットワークを介して、ロボットアームの制御サーバーに伝達する。
超低遅延でのロボットアーム遠隔制御デモの概要
今回のデモでは軌道計算サーバーとロボットアーム制御サーバーでの遅延が大きく、パックを上手に弾き返すところまではいかなかったが、ほとんどの場合、パックがゴールに入るのをブロックできていた。ちなみにLTEの場合、遅延は10ms以上になるという。
湧川室長は、超低遅延の主なユースケースとして、ファクトリーオートメーション、コネクテッドカー、ドローンの自動操縦を挙げた。
ホッケーゲームを行うロボットアーム
高精細映像の5G伝送で迷子対策も2つめのデモは、5Gの超高速大容量の特徴を活かした高精細映像伝送だ。デモルームの窓側に設置した4Kカメラで撮影した映像を圧縮後、5Gネットワークにより800Mbpsで伝送してモニターに映し出した。
5Gで4Kの高精細映像を伝送
映像をズームすると、肉眼ではとても見えない人やクルマもかなりクリアに見える。
「5Gを使うと、これぐらい高精細な映像を配信できる。画像認識と組み合わせることで、顔認識や、迷子のお母さん探しなどにも使える」
ズーム時の映像
映像系では、4つのレンズを搭載した180度カメラで撮影した映像を合成して5Gで伝送し、複数のユーザーそれぞれが、自分の好きな角度からリアルタイムに風景を楽しめるイマーシブビデオのデモも行われた。
「スタジアムなどで使うと面白いと考えている。例えば、自分の好きな選手だけを追いかけたり、ボールを中心に追いかけたりといったことができる」