国土交通省は現在、歩行者の安全や防災、景観の観点から電柱を撤去し、電線を地中に埋める無電柱化を推進している。撤去された電柱の代わりに設置されるのが「配電地上機器」だ。変圧器や開閉器を収めた電機設備である。
この配電地上機器を、街なかにおける情報通信サービスの提供に役立てようとする計画が走り出した。東京電力パワーグリッドと東電タウンプランニング(以下、合わせて「東電PG」)、パナソニックおよびパナソニック システムソリューションズ ジャパン(以下「パナソニック」)が共同で企画・開発する「スマートストリート」ソリューションだ。
機器上部にデジタルサイネージを設置して情報配信を行うほか、無線通信機能を搭載してWi-Fiサービスを提供したり、センサーや監視カメラを使ったIoTサービスを行うなど様々な用途を検討している。
歩道等に設置されている配電地上機器の上部に
デジタルサイネージを設置し、情報配信を行う
道路に面した立地を活かす配電地上機器は市街地や公園などの人が集まる場所に設置されており、そのエリアに特化した地域・観光情報や交通情報を提供するのに適している。直接電源が供給されていることも、様々な機能を搭載するのに都合がよい。
手始めに、東電PGとパナソニックは5月から、配電地上機器をデジタルサイネージ化して情報配信サービスを行う「ストリートサイネージ」の企画・開発を開始した。6月1日からは、東電PGと大日本印刷、朝日新聞社の3社で東京都の上野恩賜公園で共同実証試験も実施(2018年5月まで)。公園内の美術館や博物館、動物園等の施設案内や防災情報を配信している。また、緊急災害時には、災害の発生状況をアナウンスしたり、帰宅困難者への情報配信なども行う。
なお、ストリートサイネージで配信する情報は多言語に対応し、海外からの観光客向けにも活用する。また、サイネージに映像を表示するだけでなく、スマートフォンをかざすとURLを通知して関連情報を掲載したWebサイトへ誘導する機能も実装している。パナソニックはタッチパネル機能を搭載したストリートサイネージも開発中であり、多目的な情報配信が可能になりそうだ。
5月に開催された自治体総合フェアで展示されたストリートサイネージのデモ。
画面に映像を表示するほか、スマートフォンをかざすとURL情報を通知して、
関連するサイトを表示することもできる
こうした情報配信サービスのほかにも、設置場所に合わせた用途開発とビジネスモデルの企画を進める計画だ。東電PG・事業開発室事業開発第三グループで地上機器活用チームリーダーを務める松田憲俊氏は、用途開発のポイントは「道路に面していることを活かすこと」と話す。
例えば、電気自動車(EV)用の給電スタンド機能や自動運転アシスト機能だ。後者は、配電地上機器の付近を通過する自動車と通信する機能やセンサーを併設して実現する考えで、周辺の地図情報をクルマに送信したり、歩行者や自転車等の存在を通知したりするのに活用できるという。
また、温度センサーを設置して、気温が上昇した際に熱中症の注意喚起を行うなどのサービスも検討している。さらに「Wi-Fiホットスポットの機能を持たせたり、監視カメラを搭載することも考えている」と松田氏。防災・防犯用途での活用も視野に入れており、「自治体等と一緒に、設置場所の特性に合わせたサービスを検討したい」という。