さらに、無意識に行われる身体運動の持続時間を計測することによって、組織単位の幸福感を推定する。矢野氏によれば、この持続時間の多様性と組織の活性度には高い相関が認められるという。ばらつきが大きいほどその職場には活気があり、「逆にムードの悪い職場ほど多様性、ばらつきが小さくなる」のだそうだ。
身体の揺れの解析結果から「組織活性度」を定量化する
これにより、従来はアンケート調査などで主観的にしか捉えられなかった職場の幸福感や活性度を、客観的な数値で把握することができるようになる。さらに、Hitachi AI Technology/Hが、各個人にカスタマイズされたアドバイスを日々、自動的に作成して配信する。たとえば、「あなたは午前中に会話すると幸福度が高くなるタイプです」「○○部長と多く会話すると組織の活性化につながります」「あなたが会議で発言すると周りの幸福度が上がります」といった具合に、個人ではなく組織の活性度向上に貢献するようなアクションを勧める。
AIによる働き方アドバイスの例
これを3カ月にわたって約600人で試行した結果、前述のような結果が得られたわけだが、それに加えて矢野氏は、この組織活性度とアンケート調査などで得られる従業員満足度データとを組み合わせて分析することによって、働きがいのある職場づくりにつながるヒントを得ることもできると話す。
たとえば、組織活性度の高い部署の社員は「意思決定や権限移譲」「挑戦意欲」に関する項目で前向きな回答をしていたり、対面コミュニケーション中の双方向の会話比率が高い部署ほど、従業員が「上司からのサポートを実感し、やりがいを持ち、質の高い仕事に取り組んでいる」と回答しているといったことが確認できたという。
日立製作所は今後さらに技術の改良を進め、働き方改革を支援するコンサルティングサービスなど、さまざまな形でのサービス提供を行っていくという。