スマートメーター特化の広域無線「FlexNet」――280MHzポケベル帯域で事業化狙う

スマートメーターに特化した広域無線システム「FlexNet」の実証実験が東京、神戸に続き、箱根でも2月から始まった。NTT西日本やKDDIも実験に参加する、このIoT無線の利点は何か。


FlexNetは、水道スマートメーター市場で世界トップの米Sensus(センサス)社が2000年代から展開している広域無線通信システムだ。米国や英国で水道・電気・ガスのスマートメーターの接続などに広く利用されており、導入世帯数は2000万を超える。

高い省電力性能と広いエリアカバレッジの2つの特徴を併せ持つ、いわゆる「LPWA」の先駆けといえる存在だが、ライセンスバンドを用いて高品質なデータ通信サービスを実現している点で、アンライセンスバンドを利用するLoRaWANやSIGFOXなどとは一線を画す。

Sensusの日本法人で技術部長を務める藤田祐智氏は、「IoTの領域は広いが、高度なセキュリティと高信頼性、長期にわたる安定的なサービス提供が求められるユーティリティ(水道・電気・ガス)分野にFlexNetは特化している」と説明する。

図表 FlexNetのネットワークイメージ
図表 FlexNetのネットワークイメージ

英国での成功を機に世界へFlexNetはまず米国で商用化された。Sensusはポケットベルサービスに使われていた940MHz帯を取得し、自らFlexNetの無線ネットワークを構築。水道・電気・ガスの検針、スマートグリッドや街灯などの遠隔操作を行うサービスの提供に乗り出した。ジョージア州の電力事業者サザンカンパニー社(接続数460万台)、ペンシルバニア州のエネルギー事業者PECO社(電力240万台、ガス52万台)など、計画中のものも含めて400の案件を受注しているという。

さらにSensusは、放送事業用に使われていた400MHz帯を保有する英通信事業者Arqiva(アルキーバ)社と提携し、英国市場にも進出する。まず、英国エネルギー気候変動省から電気・ガスのスマートメータープロジェクトを受注。北イングランド及びスコットランド地域において、2014年から15年計画で1600万台の電気メーターとガスメーターをFlexNetで接続する計画だ。また、ロンドン及びテムズバレー地区を管轄する水道事業者、テムズウォーター社のプロジェクトも受注し、こちらは2030年までに350万世帯のメーターをFlexNetでスマート化する予定となっている。

米国に続き、英国でも成功したことを受けて、SensusはFlexNetの世界展開の強化を決める。そして、その主要ターゲットの1つが日本なのだ。

月刊テレコミュニケーション2017年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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