「シリコンバレーの強さの秘訣は、イノベーションを起こすための考え方や仕事のやり方として、『デザイン思考』が浸透していること」――。
こう語るのは、2017年4月にパナソニックに入社したばかりの馬場渉氏だ。元SAPの同氏は、2015年からは米国を拠点に、SAPグローバルCEO直下のDigital Transformation Officerのもとで、25の業種別のデジタル戦略策定に携わった。
同氏は現在、4月1日付で新設されたパナソニック本社技術部門の「ビジネスイノベーション本部」の副本部長と、パナソニックノースアメリカの副社長を兼務。今後、同社のビジネスイノベーションを展開・推進するキーパーソンだ。
パナソニック ビジネスイノベーション本部 副本部長の馬場渉氏。パナソニックノースアメリカの副社長を兼任する |
馬場氏が言及したデザイン思考とは、サービスや製品開発の方法論だ。ユーザー視点でニーズを認識したうえでサービスや製品を発案してプロトタイプを作り、それに対するフィードバックをユーザーから受け、さらに作り直すというサイクルを素早く繰り返してサービスや製品をブラッシュアップしていく。
「シリコンバレーでは、スタートアップのみならず、大企業や役所、学校などでも用いられており、シリコンバレーの共通言語になっている。小学校1年生の娘も、学校でデザイン思考やカスタマーエクスペリエンスについて勉強している」と馬場氏は言う。
同氏は、「シリコンバレーの強みであるデザイン思考をパナソニック全社に適用することで、パナソニック貢献できると考えている」と述べた。
新設「ビジネスイノベーション本部」は新規事業立ち上げを担うパナソニック代表取締役専務であり、新設されたビジネスイノベーション本部の本部長を兼務する宮部義幸氏は、パナソニック本社がビジネスイノベーション本部を新設した目的を次のように語る。
「既存事業の延長線上にある新技術の開発だけでは、当社の成長が十分の担保できない。“技術”だけでなく、“事業”のイノベーションにも、本社として取り組む。それを推進するためにビジネスイノベーション本部を設置した」
パナソニック代表取締役専務(兼)ビジネスイノベーション本部 本部長の宮部義幸氏 |
ビジネスイノベーション本部の体勢と役割 |
ビジネスイノベーション本部は、サービス中心の新規事業やIoT/AI技術に基づく新規事業を自ら立ち上げること目指す。そのため、パナソニックとしては北米でのベンチャー投資の額を増やして継続する意向ではあるものの、ビジネスイノベーション本部が投資や買収などに自ら携わるわけではないという。