低速小容量ながら、省電力かつ広域エリアをカバーできるIoT向け無線通信「SIGFOX」の提供を2月27日から開始した京セラコミュニケーションシステム(KCCS)。同社は4月11日、パートナーなどの関係者を集め、開業式を行った。
挨拶に立ったKCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏は、「SIGFOXが作ったLPWAのコンセプトとネットワークは世界に大きなインパクトを与え、LoRaやNB-IoTといった追随するテクノロジーを生み出す元になった。だが、いまだにLPWAの分野で世界をリードしているのはSIGFOXだ」とアピールした。
KCCS 代表取締役社長の黒瀬善仁氏
その証左の1つとして黒瀬氏が言及したのが、藤枝市全域や福岡市全域をLoRaでカバーするなどの報道だ。
「これらの記事はいみじくもLoRaの特徴を表している。LoRaは、ローカルなWi-Fiライクなネットワークであって、ネーションワイド、あるいはワールドワイドで一元的に使うことを意図したものではないということだ」と、SIGFOXとの違いを強調した。
KCCSは、2018年3月までに政令指定都市を含む主要都市、2019年3月までに人口カバー率85%、そして2020年3月末には人口カバー率99%を達成する計画だ。また、SIGFOXは現在32カ国でサービスが提供中・あるいはエリアの構築中で、海外でもシームレスに利用できる。
「私どもはSIGFOXネットワークを日本全国で使える社会基盤として作り上げ、あらゆるものをつなげる新たな未来を作り上げていく」と黒瀬氏は意気込んだ。
KCCSのSIGFOX展開計画
LPWAニーズのある地域のエリア化を前倒し開業式では、最新のエリア状況についても説明が行われた。以下のスライドが現在のエリアカバレッジを示したもの。「大阪市は、いったんすべての基地局を打ち終え、完成している」(KCCS ICT事業本部 LPWAソリューション部責任者の大木浩氏)という。
SIGFOXの現在のエリア状況
もちろん、大阪市内全体をカバーしたといっても、本当にすべてのエリアでSIGFOXが使えるかどうかは分からない。そこでKCCSは大阪市内でフィールド試験を行ったが、96%の測定点で3局以上のSIGFOX基地局の電波を捉えることができたという。なお、これは屋外での測定結果だ。
さらに、非公式の測定結果ながら、「大阪市内をうろうろして測定したところ、屋内やビルとビルの間などでも、大体9割以上のところで通信できた」という。
大阪市内でのフィールド試験結果
前述の通り、KCCSはSIGFOXのエリア展開をまず政令指定都市から行っていく予定だが、「利用が見込める地域は優先的に展開する」と大木氏は説明。「LoRaのゲートウェイ構築を提案している方はぜひKCCSに相談してほしい。その地域のSIGFOXの基地局建設を前倒しできると思う」と、LoRaへの対抗心を露わにした。
自前でLoRaネットワークを構築する場合と比べ、初期費用を大幅に削減できるのに加え、「SIGFOXの場合は私どもが保守しているので安心して利用いただける」のがメリットだという。