無線LANの位置付け
LANケーブルを使わずに電波を使ってネットワーク接続を可能にする無線LANは、OSIの7層モデルでいえば、レイヤ1の物理層とレイヤ2のデータリンク層の部分を有線から無線に置き換えたものだ。
一方、モバイル機器や周辺機器にはWiMAXやBluetoothなども搭載されているが、これらの無線通信と無線LANはどのような位置関係になっているのだろうか。
その様子を示したのが図表1である。つまり、無線を使ったネットワークは無線LAN(Wireless Local Area Network)だけではなく、通信可能な距離によって、無線PAN(Wireless Personal Area Network)、無線MAN(Wireless Metropolitan Area Network)、無線WAN(Wireless Wide Area Network)、無線RAN(Wireless Regional Area Networks)に分類されており、それぞれの分野で技術開発が進められているのである。
図表1 無線通信の全体像 |
無線LANの規格動向
図表1に示したように、無線LANはIEEE802.11でその通信規格が策定されており、これらの規格に準拠した製品の相互運用性を認定する業界団体として「Wi-Fi Alliance」が存在する。Wi-Fi Allianceでは製品の相互接続性を保証するために互換性テストを行っており、これに合格した製品は「Wi-Fi Certified」というロゴを製品に表示できるようになる。
現在までにIEEE802.11委員会で策定された主な規格を図表2に示す。1999年に策定されたIEEE802.11bを契機に、無線LAN市場が形成されるようになり、続いてIEEE802.11aが策定され、2003年にはIEEE802.11gの対応製品が登場した。そして、2009年にはIEEE802.11n(最大600Mbps)が策定され、これを受けて、企業での無線LAN導入が加速するものと期待されている。なぜなら、次のような導入メリットを挙げることができるからだ。
図表2 無線LANの主な規格 |
電波は、周波数が高くなるほど波長が短くなることから、障害物などの影響を受けやすくなり、減衰しやすくなる。従って、5GHz帯のほうが2.4GHz帯 に比べると通信距離は短くなり、カバーエリアは狭くなる。一方、802.11nの場合には、MIMO技術の採用により高速化を実現しているだけでなく、 ビームフォーミングや合成ダイバーシティの導入により、通信品質(安定性)の向上と、通信距離(カバーエリア)の拡大を図っている。MIMOとビームフォーミングについては、【コラム】無線LANの高速化を実現する「MIMO」と「マルチユーザーMIMO」 を参照して頂きたい。また、合成ダイバーシティとは、電波の受信レベルの変動が大きいときに、複数のアンテナを使って電波を受信し、それらを合成すること で通信品質を向上させる技術のこと。 |
IEEE 802.11n の導入メリット