ビジネスのデジタル化が進展することで、企業のネットワークインフラ構築を主力事業とするSIerの事業環境はどう変わるのか。
デジタル化の1要素といえる業務システムのクラウド化は、すでにSIerのビジネスに大きな影響を及ぼしている。ITインフラ投資の需要が、オフィス内からデータセンター(DC)へと移っているのだ。ネットワーク設備も例外ではない。
2015年末にIDC Japanが発表した国内データセンターネットワーク機器市場予測によれば、イーサネットスイッチ、ADC、WAN最適化、InfiniBandからなる同市場の規模は、前年比9.4%増の836億1400万円と大幅に成長。ネットワーク機器市場全体が低成長市場であることから考えれば、ネットワーク構築の需要は一般的な企業LANで減る一方、DCネットワークで増大する対照的な動きとなっていることが明らかだ。
NIビジネスにもサービス化の波この傾向は今後も継続するはずだ。だが、成長市場とはいえ、DC/クラウド向けのインフラ構築ビジネスを中堅中小規模のSIer が手がけるのは難しい。
加えて、企業LAN/WANでは、SI需要が量的に減少するだけでなく、質的変化も起きている。ネットワーク機能の調達方法が「サービス化」しているのだ。専用アプライアンスを購入するのではなく、クラウドサービスとして提供される機能を利用する形態へ移行している。クラウド型Wi-FiやSD-WANがその代表例だ。
こうしたソリューションでは、ユーザーは無線LANアクセスポイント(無線AP)やCPE(宅内通信機器)といった、ネットワーク接続に最低限必要な機能のみを備えたハードウェアを宅内に設置し、クラウドから提供される付加価値機能(認証、アクセス制御やファイアウォール機能等)を必要に応じて利用する。
今後、こうしたネットワークのサービス化はさらに加速するはずだ。
なぜなら、ビジネスとITが密接に融合するデジタル化の時代、ユーザーは“サービスとしてのネットワーク”を利用することでコストを最適化し、かつ、ビジネスの要件に即応して素早く変化させられるネットワークを求めているためだ。