IoTで新たなビジネスモデルを創出ニフティIoTデザインセンターが対応してきた約100件の案件は、ファクトリーオートメーション、ホームオートメーション、ヘルスケア、交通・流通、スマートメーター、マルチメディア、ウェアラブルデバイス、教育など幅広い分野にわたる。佐々木氏は、この中から前述のデータのフィードバックループの事例として、温浴施設のオペレーション改善、害獣捕獲作業の効率化、幼稚園のオペレーション改善の3つを紹介した。
その1つ、温浴施設の事例では、スタッフに配布した位置情報センサーと館内のステレオカメラで従業員・顧客の動きを把握できるようにし(データの取得・分析)、これを従業員の配置改善に活かすことで(分析結果の活用・反映)、顧客満足度の向上(効果・メリット)を実現したという。
すなわち、IoTによりこれまで取得できなかった「データ」の活用を可能にし、これを「アクション」に落とし込み、オペレーションの最適化・効率化・コスト削減といった「メリット」を生み出しているのだ。
温浴施設、害獣捕獲作業、幼稚園におけるデータのフィードバックループの効果 |
さらに佐々木氏は「IoTの価値はオペレーションの最適化だけではない。特に製造業では顧客接点の強化と新たな製品・サービスの創出への期待感が高い」と指摘、その具体化となる「売り切りモデル」から「サービスモデル」への変革の動きを解説した。
IoT化・データのフィードバックにより、メーカーは顧客・エンドユーザーと継続的なつながりを持てるようになる。これによって顧客情報を活用したマーケティング、アフターケアサービスの販売、ネットサービスのような従量課金・継続課金による新たなビジネスモデルの創出が、可能になるというのである。
データのフィードバックループに基づく製造業の新たなビジネスモデル |
佐々木氏は、スマートフォンを活用して効率的にタクシー(海外では自家用車による運送も)や宿泊の仲介を行うUberやAirbnbなどのシェアリングエコノミーの動きを例にあげ、今後、製造業のビジネスもモノにサービスを加えて体験・効用・満足を売る形に大きく変化すると予想する。そしてこの変化に対応するには、モノと人を総合的に管理できる仕組みが不可欠になると指摘した。新時代のビジネスではエンドユーザーときちんとコミュニケーションがとれるかが競争の優劣に直結することになるという。データのフィードバックループの手法は、その有効な手立てとなるというのだ。
佐々木氏は、この分野でのニフティの取り組みとして、オムロンが今年立ち上げた新サービス「環境センサー」の事例を紹介した。温度や湿度、光、音など7種類の環境情報を取得できる小型センサーをユーザーに配布し家庭・オフィス・屋外・工場の快適な暮らしをサポートするというもので、IoTデザインセンターは、ターゲットペルソナの設定、ユーザーシナリオの作成、UI設計・アプリ開発など、このプロジェクトを企画・提案フェーズから支援してきたという。
「IoTデザインセンターを通じて、企業のビジネスモデルの転換・イノベーション創出に貢献していきたい」――佐々木氏は、ニフティの新たな領域への挑戦に強い意欲を見せた。