「2016年は重要な転換点になる」――。VMware CEOのパット・ゲルシンガー氏は2016年11月7日に行われた記者説明会でこう述べた。
大きな転換点を迎えたのは、データセンターの担い手だ。IDCの調査によると、2016年、サービスプロバイダーによるデータセンターの新規構築数が、自社データセンターの新規構築数を逆転した。このトレンドは今後も続き、「ほとんどのデータセンターは、クラウドプロバイダーの手に委ねられる」(ゲルシンガー氏)ことになる。パブリッククラウドの利用が拡大しているからだ。
データセンターは「DIY」から「サービスプロバイダー」へ |
ゲルシンガー氏によれば、世界のITワークロード数に占めるパブリッククラウドの比率は、まだ15%にとどまっている。しかし、2021年には30%、そして2030年には世界のITワークロードの52%がパブリッククラウドになるという。
2030年のITワークロード数の予測。パブリッククラウドが52%、プライベートクラウドが29%と大半がクラウド化する |
こうしたなかVMwareは、プライベートクラウドとともに、パブリッククラウドにも注力してきたわけだが、最近その戦略には変化が見られる。
今年4月、同社のパブリッククラウドサービス「vCloud Air」の日本ロケーションでの提供終了をアナウンス。また今年10月には、パブリッククラウド最大手であるAWSと提携し、AWSのベアメタル上でVMware環境を実現する「VMware Cloud on AWS」を提供すると明らかにした。
VMwareのパブリッククラウド戦略は、よりパートナー重視の方向へとシフトしており、今年8月にはプライベートクラウドや他社のパブリッククラウドまでを統合管理する「VMware Cross-Cloud Architecture」も発表している。
Cross-Cloud Architectureの概念図 |
ゲルシンガー氏は、「クラウドに自由とコントロールを与えるのが我々の仕事だ」という言い方で同社のハイブリッドクラウド戦略を説明した。
「日本のベストプラクティスを海外へ」さて、この日新たに発表されたのは、ハイブリッドクラウド推進のためのパートナーシップ強化だ。VMware日本法人の代表取締役社長を務めるジョン・ロバートソン氏は、「Cross-Cloud Architectureとパートナーシップを活用して、顧客のハイブリッドクラウド化を強力に推進する」と説明した。
記者説明会には、日本における有力なVMware vCloud Air Network Program(vCAN)パートナーであるIIJ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本アイ・ビー・エム、富士通の6社も登壇し、それぞれVMwareとのパートナーシップについて語った。
VMware CEOのパット・ゲルシンガー氏(左から4番目)と日本法人社長のジョン・ロバートソン氏(左から5番目)、そして国内の有力vCANパートナーの代表者たち |
vCANは同社のサービスプロバイダー向けエコシステムで、vCANパートナーはVMwareの技術をベースにしたパブリッククラウドサービスなどを提供している。
これらのvCANパートナーにとって、VMware Cloud on AWSは強力なライバルの登場を意味するが、ロバートソン氏は日本のvCANパートナーには大きなアドバンテージがあるという。それは、高水準のSLAと手厚いサポートサービスの2つだ。ミッションクリティカルなアプリケーションにおいては、信頼できるパートナーのクラウドを使いたいというニーズが強いとした。
また、これは日本固有のニーズではないとも指摘。ロバートソン氏は「日本のベストプラクティスは海外に持っていける」と語り、グローバル市場での連携強化をさらに進めていきたい考えを示した。
なお、日本国内でのVMware Cloud on AWSの提供時期は、まだ未定だという。