これからのIP網の基盤技術を目指して、NTTは「Multi-Service Fabric(MSF)」を研究開発している。
MSFは、NGNなどの構築に用いられている高機能なエッジ・コアルーターなどの専用装置に代えて、機能がシンプルな汎用製品を用いることでネットワークを安価に構築しようとするもの。さらにこれらを仮想化技術で動的に制御することで、現行ネットワークにない柔軟性・利便性を実現することを目指している。
開発に携わるNTTネットワークサービスシステム研究所(NS研)ネットワーク伝送基盤プロジェクト 主幹研究員の吉岡弘高氏は、現状を「研究レベルでの動作・有効性の確認が終わった段階」とした上で、「最初の実用化に必要な機能を2016年中に仕上げ、年明けに商用に向けた最終試験を行う計画だ」と明かす。
安価な汎用スイッチを活用MSFはNTTが2015年2月に発表した将来のネットワークに関する技術開発コンセプト「NetroSphere構想」の中で転送レイヤを担う技術として位置づけられているが、検討が始まったのは前年の2014年春。7月にMulti-Service Fabric(MSF)と名付けた。
ではNTTがMSFの開発に取り組む動機はどこにあったのか――。
NS研 主任研究員の高橋賢氏は、そのきっかけを、既存のルーターベンダーの専用装置を使って構築されている従来のIP網の制約にあったと説明する。「特にNGNの場合は、電話、インターネット、映像のトリプルプレーのようなサービスを専用装置の中に作り込むような形で実現していた。そのため、ある程度高性能な装置を使わざるを得ず、特定の機能だけをアップグレードすることが困難であったり、リソースの平準化が難しいなどの課題があった」という。その解決策として「汎用的なハードウェアを活用することで、コストを最適化し、柔軟性の高いネットワークが作れないかと考えた」というのだ。