街中を颯爽と走る真っ赤な車体の電動アシスト自転車――。一見しただけでは何の変哲もない電動自転車だが、実は通信機器やGPSなどを搭載したIoT自転車だ。
ドコモ・バイクシェア企画部長の井上佳紀氏は、IoT自転車を開発した経緯について、「コミュニティサイクルを管理するためのノウハウにドコモが持つ情報通信技術を活用できると考えた」と話す。
ドコモ・バイクシェア 企画部長 井上佳紀氏 |
ドコモは2008年頃から、携帯電話以外の領域において新たな事業を創出すべく、検討を開始していた。その検討過程で着目したのが、海外で活発化していたシェアリングというムーブメントだ。地球の温暖化を背景にパリやロンドン、ニューヨークなどの都市で、自転車をシェアする「コミュニティサイクル」が立ち上がり始めていた。
しかしながら、そのコミュニティサイクルには、導入・運用のコストが高いという課題があった。自転車の貸出・返却といった制御を、自転車を駐輪するサイクルポートで行っていたため、導入時にはサイクルポートに制御用機器を整備するための大規模な電気工事が必要で、多額の導入コストが発生する。さらに、サービスとしてまわすには有人管理が必要なケースもあり、それが運用コストを押し上げる。
そこでドコモは発想を転換し、サイクルポートではなく自転車本体に通信機器やGPS、遠隔制御機能を持たせ、自転車をIoT化することを考えた。そうすれば電気工事は不要になり、既存のコミュニティサイクルの仕組みに比べて導入費用を30%低減できると試算した。無人管理も可能となる。IoTを活用して安価なシステムを開発・提供すれば、コミュニティサイクル市場で競争力を発揮できる。