――2016年はIoT(Internet of Things)が大きな焦点となり、人工知能(AI)、ビッグデータなど新たな情報通信技術の登場もあって、ICTで大きな変化が起きようとしています。
稲田 いずれもデータ活用により新たな価値を創造する仕組みであるという点で共通しており、根っこは同じだといえます。
各種センサ等が発展したことで、収集・集積したデータを分析し、実世界のさまざまな事象を従来よりも迅速かつ正確に認識・理解・判断できるようになりました。そうしたデータ分析の結果を実世界にフィードバックして制御を高度化・精密化することが、新しい価値の創出につながっています。
これらのキーワードが注目されている背景には、(1)見えなかったものが見えるようになった、(2)ネットワークを簡単に構築できるようになった、(3)コンピュータパワーが目覚ましく強力になったという3点があります。
(1)の具体例としては、米グーグルが開発した「スマートコンタクトレンズ」が挙げられます。
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度を表す血糖値が高い状態が続くことでさまざまな合併症を引き起こすとされており、患者は血糖値の管理が必須です。現状、指先を針で刺して採血する方法が採られていますが、頻繁に行うとなると痛みや精神的負担を伴います。
涙に含まれるグルコース値が血糖値と相関があることが明らかになっていますが、血液と比べて希釈なため、少量の涙からいかに感知するかが課題でした。
スマートコンタクトはレンズに高感度センサとコントローラチップ、無線アンテナを内蔵しており、涙に含まれるグルコース値をリアルタイムに測定することで、より簡単に血糖値管理を行えるようになると期待されています。
また、日立製作所の「名札型センサ」は、搭載された赤外線センサや加速度センサなどを用いて人と人の対話の有無や対話時の体の動きなどを感知し、人や組織の活動度を定量化するというものです。
オフィスがにぎやかで活気にあふれた企業ほど業績が好調であるといわれますが、名札型センサでコミュニケーションを活性化し業績改善に役立てる企業も出始めています。
このように、これまで可視化できなかったものを可視化し、集めたデータを分析することで、今まで管理や評価が難しかった事象をマネジメントできるようになっているのです。