企業LAN/WANで現在、大きな課題となっているのが管理の複雑化に伴う運用負荷の増大だ。これを受けてベンダー各社は、運用管理をいかに効率的に行うかという視点での製品開発と訴求に力を入れている。
IDC Japanコミュニケーションズ・グループマネージャーの草野賢一氏は、「市場全体がその方向に進んでいる。運用管理の効率化はユーザー企業自身もずっと『なんとかしたい』と悩んでいた課題であり、改善するタイミングに来たのではないか」と話す。
この点で期待がかるのがSDNとNFVの普及だ。だがこれまでは、企業LAN/WANの構成や使い方を大きく変えるまでの流れにはなっていない。
(左から)IDC Japan コミュニケーションズ・グループマネージャーの草野賢一氏、NEC・スマートネットワーク事業部シニアマネージャー(エンタープライズSDN事業統括)の中島輝行氏、NEC・SDNビジネス開発室シニアマネージャーの藤本幸一郎氏 |
認知度高まるも普及はじわり2016年、SDN/NFVは企業のネットワークにどこまで浸透するのか。
IDC Japanが2015年11月に発表した「2015年 企業のネットワーク機器利用動向調査」によれば、企業のデータセンター/サーバールームにSDNを導入した企業の割合は前年調査時の29.9%から45.3%へと大幅に増加、導入予定企業の比率も上昇している。
また、NFV技術を使って、通信事業者が仮想化されたネットワーク機能(セキュリティやWAN最適化など)を提供するvCPE(virtual Customer Premises Equipment)サービスの導入も、企業は前向きに検討しているという。
従業員数1000人以上の大企業で、vCPE/NFVサービスを導入済みまたは検討中の企業の割合が約57%にまで達しているとしている。
このように、SDNとvCPEの効果については企業にも認知が進んでいる。ただし、SDNについては導入コストがまだ高いこと、LAN設備の更改は一定期間ごとに計画的に進められることなどから、普及速度が急激に速まるとは考えにくい状況だ。草野氏も「ゆっくりと進む」と慎重な見方を崩さない。
そうした状況にあって、好材料と言えるのが、SDNのユースケースが増えてきたことだ。
「NECが積極的に事例化しており、適用範囲としていろいろなものが考えられる状況になってきた」と草野氏は話す。期待されるのは「NECに続くフォロワーが出てくること」(同氏)だが、シスコシステムズや日本ヒューレット・パッカードも以前から企業LAN/WAN向けのSDNソリューション提供に注力する姿勢を見せている。また、2016年は通信事業者のvCPEサービス提供も本格化すると見られる。
図表1 NECの主なSDN導入事例(通信事業者を除く) |
では、具体的にどのようなユースケースで使われていくことになるのか。すでに250を超えるSDNシステム稼働実績を持つNECの現状を例に、2016年を展望しよう。