日本通信が総務省方針を受けた新事業戦略――HLR/HSS連携で多様なサービス実現へ

日本通信は2016年1月22日、総務省が昨年11月に打ち出したMVNO規制緩和方針を受け、新たな事業戦略を発表した。

携帯電話料金問題をテーマとする有識者会議(携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース)での議論を踏まえ、総務省は11月10日、27日にMVNOガイドラインの改正などを含む省令改正案を公表。日本通信が求めてきた接続料の透明性向上とともに、HLR/HSS機能連携などの技術的制約の解消を図る方針を打ち出した。新事業戦略はこの総務省方針、特に技術的な課題解消を受けて策定されたものだ。

総務省は今回の方針で音声通信(回線交換)に関わる機能の開放(アンバンドル指定)とともに、HLR/HSS連携機能、料金情報提供、端末情報提供などを「開放を促進すべき機能」とした。

新たな事業方針を発表する福田尚久社長
新たな事業方針を発表する福田尚久社長

1月22日、都内で開かれた記者会見において日本通信 代表取締役社長の福田尚久氏は、今回の総務省方針を格安SIM実現の契機となった2007年のレイヤ2接続での総務大臣裁定に匹敵する「MVNO規制緩和第2弾」と位置づけた。特に「HLR/HSS連携などの機能が(携帯電話事業者が開放義務を負う)『接続』として明確に位置づけられたことが大きい」という。これによりMVNOの事業展開の可能性が格段に広がることになるからだ。

日本通信は今後、この規制緩和を活かして、(1)月額980円といった安価な音声定額サービス、(2)フルIP電話、(3)世界中で安価に通信ができる「グローバルマルチキャリアSIM」、(4)携帯電話によるセキュアな回線サービスを、国を超えて提供する「グローバル無線専用線」などのサービスの提供を計画している。

HLR/HSS連携により、独自のSIM発行や電話番号割当てが実現することから、NFC決済などの提供やSIMソリューションの展開も進める。

日本通信が今後の提供を計画しているサービス・機能
日本通信が今後の提供を計画しているサービス・機能

日本通信は事業領域の拡大を機に、戦略の転換も図る。日本通信は自らもMVNO事業を手掛けることで市場の立ち上げに貢献していく戦略を取ってきたが、今後はこれらの多様なサービス・機能の提供を通じてMVNO、SIer、メーカー、金融機関など、パートナー企業のビジネスを支援するMSイネーブラ(モバイルサービス支援)事業に軸足を移す。

日本通信が想定するMSイネーブラ型事業モデル
日本通信が想定するMSイネーブラ型事業モデル

これを実現するために回線調達先をドコモだけでなくKDDIやソフトバンクにも拡大。海外で利用中のボーダフォン、ベライゾン、スプリントなどと併せて、国内外シームレスなサービスの提供を実現する。

また、HLR/HSS、IMSなど、携帯電話事業者と同様の構成のネットワーク整備や、決済などのプラットフォーム構築も進めていく。

日本通信が、企業向けソリューションとして特に力を入れているのが、12月に日本での本格展開を発表した無線専用線だ。福田社長は「セキュアな無線ネットワークがキャリアを問わずに利用できる点に、大手を含む多くの企業から強い関心を持っていただいている。大きなビジネスに成長すると期待している」と語った。

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