標準化の進展と水平統合プラットフォームが可能にする低コストなIoT/M2Mシステムこうした現状を解決する糸口もないわけではない。
1つは、現在進行形で複数の業界標準の策定が進行していることだ。「大手のベンダーが参加し、『OpenInterconnect』や『ThreadGroup』といった形で標準化に向けて動き始めている。その1つである『AllseenAlliance』などはわれわれのソリューションと相性がいい。こうした標準が整い、APIや仕様が出来上がれば、開発の負担がかなり減り、今説明した課題に対するソリューションの1つになると大いに期待している」
図表1 標準化 |
もう1つが、同社が提供しているIoT向け水平統合プラットフォーム「ServiceSync」だ。車載監視やエネルギー監視、品質管理、さらにはこれから生まれてくるであろう新しいサービスも含め、複数のサービスを1つのプラットフォーム上で稼動させることを狙っている。
「ServiceSyncのコンセプトは3つある。1つは『Yourself』で、SDKやAPIを公開し、どんな人でも開発できるようになっている。2つめは『Scale』で、かなりの台数をさばくことが可能だ。3つめはインヴェンティットという会社の本質である『Remote』で、双方向通信をベースとした制御が可能となっている」
ServiceSyncは、サーバと、デバイスやゲートウェイにインストールされるクライアントで構成されている。デバイス側で収集したデータは、ゲートウェイからインターネットやWAN回線経由でサーバに集約され、逆にサーバからは各デバイスの監視やアップデートといったメンテナンス作業が行える仕組みだ。目黒氏はその主な機能として「デバイス管理」「アプリケーション管理」「可視化を実現するビューワ」「データ連携」「セキュリティ」、それに「プロトコル」を挙げ、「IoTに必要な機能をコンポーネントとして提供する」と述べた。
図表2 製品概要 |
例えば、ServiceSyncが提供するWebベースの管理コンソールでは、各デバイスやアプリの状態を確認できるだけでなく「データが上がってこないようなことがあれば、その場でログを収集して問題を特定し、メンテナンスすることができる」
Rest APIを介した柔軟な開発も可能だ。「BaaS(Backend as a Service)やMBaaS(Mobile Backend as a Service)として利用すれば、より早くIoTのシステムを構築できる。もちろん、自社で運用することも可能だ」
図表3 APIの位置づけ |
目黒氏は実際にServiceSyncを用いて、リモートからアプリケーションやファームウェアをアップデートし、ログを確認するといった管理作業を行ったり、データを吸い上げ、GPS情報を元にビューワ上に端末の位置(=つまり同氏が今いる会場の位置)を表示させるといったデモンストレーションを行った。
面倒な部分はプラットフォームに任せ、「価値の創造」にフォーカスをすでにいくつかの企業がServiceSyncを採用し、IoT用途に活用している。ある流通関連企業では、「食品を保管している倉庫の温度などを10分おきに監視し、異常がないかを確認するために利用していただいている。実は管理者は一度もこの現場に足を運んだことがなく、全てリモートからサポートを行っている」そうだ。
さらに、車載端末の管理やスマートフォンを活用したヒートマップの作成など、アイデア次第でさまざまな応用が可能だ。それも、可視化の部分については、標準のアプリを利用すれば、新たに個別に開発を行う必要はない。同社では現在、フリーで利用できるServiceSyncのトライアル環境を用意しており、IoT開発に取り組む企業にぜひ試してほしいという。
目黒氏は最後に、会場に向けて次のように呼び掛けて講演を締めくくった。「本来、価値を生むのはデータの部分。こうしたプラットフォームを活用することによって、足回りやセキュリティ、管理の部分にお金や手間をかけず、価値を生むところにフォーカスしてほしい」