老人ホームで介護サービスを受けている高齢者が起床すると「おはよう」とロボットが声をかけ、体調を尋ねる。もし高齢者が転倒すれば介護職員に通知がいく。
これは、IoT技術を用いてNTTデータが開発を進めている高齢者支援サービスの利用イメージだ。このサービスにおいて重要な役割を果たすのが対話機能を備えるコミュニケーションロボットである。
高齢化が進行する日本でいま「2025年問題」がささやかれている。10年後、高齢者人口は約3500万人に達し、全人口の約30%を占めると見込まれている。これは厚生労働省が2006年に発表した数字だ。
一方で、高齢者の世話をする介護職員は2025年時点で38万人不足すると同省は試算している。介護職員を増やすとともに、介護業務を効率化して職員の負荷を減らすことが求められる。
NTTデータが開発を進めている高齢者支援サービスの目的は、介護業務を効率化すること、そして対話を通じて認知症を予防したり認知症を早期発見することだ。
同社が開発中の高齢者支援サービスを構成するのはロボットとセンサー、クラウドというIoTの要素技術だ(図表1)。
図表1 高齢者支援の実証実験におけるシステム構成 |
ロボットは大阪に本社を構えるロボットメーカーのヴイストンが開発した「Sota(ソータ)」を採用した。Sotaは、マイクとスピーカーを備え、高齢者とのインタフェース機能を担う。それに対してクラウドは高齢者支援サービス全体の頭脳として機能する。ロボットのマイクを通じてキャッチした高齢者の声は、ネットワーク経由でクラウドロボティクス基盤に送られる。
コミュニケーションロボット「Sota」。ハードウエアはヴイストンが開発した |
また、部屋に設置された人感センサーおよび離床センサーが高齢者の行動をモニタリングし、センシングデータとしてクラウドロボティクス基盤に送る。クラウドロボティクス基盤は、受信した音声データとセンシングデータを分析して、そのときどきの状況にふさわしいタスクを実行する仕組みだ。