ケーブルを使わずに無線で電力を送る「ワイヤレス電力伝送」(WPT:Wireless Power Transfer)への関心が高まっている。インドの調査会社・Fortune Business Insightsによると、2025年に173億7000万米ドル(約2兆7600億円)だったグローバルのWPT市場は、2034年には約2.6倍の449億5000万米ドル(約7兆1500億円)へ拡大する見込みだ。
WPTは大きく「近接結合型」と「空間伝送型」に分類される。近接結合型は、磁界結合などの技術を用い、送電側と受電側を近接させて電力を伝送する方式だ。すでにスマートフォン向けワイヤレス充電器などで広く使われており、今後はEV(電気自動車)向け非接触給電システムへの本格実装も進むと見られる。
一方、空間伝送型は、電気エネルギーを電波に変換し、数~数十メートル程度離れた機器へ送電できる方式である。工場内の各種センサーなど、IoT機器への電力供給を実現する技術としても期待が高まっている。
この空間伝送型WPTシステムの研究開発・実証に取り組む1社が、大手ゼネコンの大成建設だ。清掃・警備ロボット等に送電装置を搭載し、建物内のIoTセンサーやデバイスへ給電する「T-iPower Beam」を2022年に三菱電機と共同開発した。
「建物内へのセンサー導入が加速すると見込まれているが、課題となるのが、配線工事や配線スペースの確保に加え、バッテリー交換やメンテナンスに伴う運用コスト。この解決策となり得るのが、T-iPower Beamだ」と技術センター 先進技術開発部 次世代技術開発室 WPT推進チーム 課長の山口晃治氏は語る。

大成建設 技術センター 先進技術開発部 次世代技術開発室 WPT推進チーム 課長 山口晃治氏
5.7GHz帯を活用する理由は?
2022年に制度化された空間伝送型WPTは、920MHz帯/2.4GHz帯/5.7GHz帯という3つの周波数帯の利用が認められている。なかでも920MHzWPTシステムは、送信出力が最大1Wと比較的小さいため人体への影響が軽微であり、電波が物陰に回り込みやすいという特徴を持つことから、920MHz帯が広く使われている。
こうした中、T-iPower Beamは5.7GHz帯を採用している。その理由について山口氏は、「920MHz帯では送れる電力が小さく、駆動できるのは低消費電力のセンサーなどに限られる。また、5.7GHz帯は920MHz帯と比べて波長が短く、アンテナをコンパクトに設計しやすい。小型化と大容量送電を両立できる周波数として、5.7GHz帯を選択した」と説明する。













