山手線でミリ波が使える日も現実に? KDDIとドコモがタッグで挑む「ミリ波共用中継器」の実力

KDDIとNTTドコモがタッグを組み、ミリ波のカバレッジ拡大に向けた「共用中継器」を共同開発した。山手線車内をミリ波でエリア化する実証にも成功し、車内における快適な通信環境の実現に期待が高まる。

共用中継器の実証を開始

KDDIとドコモは、上野恩賜公園(以下、上野公園)で共用中継器を活用した実証実験を実施中だ。上野公園の一部エリアにそれぞれのミリ波基地局を1局ずつ設置し、共用中継器1基を用いてミリ波エリアを拡張できるかを検証している。

具体的には、KDDI・ドコモのいずれか1社の基地局が吹く電波のみを中継する場合と、KDDI・ドコモ両社の基地局から受信した電波を同時に中継する場合とで、スループットやエリアカバー率などにどのような差が生じるかを評価する。

また、「中継器でKDDIとドコモの電波を同時に受信するにあたっては、両社の基地局配置が重要な要素となる。今後は、ロケーションの違いによる通信品質への影響を評価するとともに、配置場所の確保を含めた運用面での課題も洗い出していきたい」と同部 RAN先進技術開発G グループリーダーの田中敦氏は語る。

商用化の時期は未定だが、「例えばコミックマーケットでは、各通信事業者が車載基地局を横並びで配置するケースが多い。こうした環境であれば、共用中継器の設置条件を満たしやすい」と井上氏は述べ、イベント会場における活用の可能性を示唆した。

他の通信事業者への対応についても検討中だという。「ソフトウェア制御やフィルター設計の工夫によって、将来的な拡張余地はある」(同氏)。

ミリ波で山手線車両内をエリア化

共同中継器の開発に加え、今年3月には山手線車内をミリ波でエリア化する実証にも成功している。「ミリ波によって車内の通信品質を向上させるとともに、車掌-駅員間の円滑な情報共有など、鉄道業務のDXに貢献したいと考えている」と田中氏は実証の狙いを話す。

実証では、屋外のミリ波基地局が吹いた電波を、車両の窓に取り付けたAGC製のガラスアンテナで受信。京セラが開発したアンプで増幅し、電波を低損失に伝送可能な日本電業工作製の誘電体導波路を介して車内へ放射した(図表2)。

図表2 山手線車両で実施した実証の構成イメージ

図表2 山手線車両で実施した実証の構成イメージ

導波路の途中には、金属ピンを挿入して形成した「漏洩アンテナ」を数カ所設けるとともに、導波路の先端を削って形成した「ロッドアンテナ」を配置。漏洩アンテナで必要な場所へ効率的に電波を届け、ロッドアンテナで先端から広範囲に電波を放射する構成とした。

実証の結果、山手線車内で通信速度1Gbpsを達成可能な通信エリアは、約97%に改善したという。

今回の実証は停車中の車両で実施したが、走行中でも同様の通信品質を実現できるかが次の焦点となる。また、実用化に向けては、今回の装置構成を商用車両へ適用できるかに加え、運用・保守を含めた様々な課題について検討していく必要がある。

とはいえ、通勤ラッシュ時など乗客が集中する時間帯は通信が混雑することも多く、ミリ波による車内の快適な通信環境の実現が期待される。「電車内や駅などの鉄道空間でミリ波をより広く活用できるよう、鉄道事業者とも議論を進めていきたい」と同氏は力を込める。

「通信業界では『ミリ波が実際に使える技術』だという認識が広がってきたが、一般ユーザーにミリ波が本格的に浸透していくには、対応端末の拡大が欠かせない」。井上氏はこう述べたうえで、「通信事業者がミリ波の活用を積極的に推進する姿勢を示すことで、端末ベンダーの開発を後押ししたい」と意気込んだ。

[月刊テレコミュニケーション 2026年9月号の記事を再構成]

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