「第5世代移動通信システム(5G)国際ワークショップ2014」(主催・総務省)が2014年10月8日、CEATEC2014で開催された。
アナログ方式(1G)からGSM/PDCなどのデジタル方式(2G)を経て3G(IMT-2000)に進化した携帯電話は、現在その後継となるLTE/LTE-Advanced(いわゆる4G)への移行期に差し掛かっている。5Gはその次の世代となる移動通信システムで、2020年以降の実用化が見込まれている。
5Gの標準化に向けては、ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)で基本コンセプトや要求条件などの議論がすでに始まっている。また、欧州や中国、韓国でも推進組織が設立され、実用化に向けて活発な動きを見せている。さらに日本でも今年9月、5Gの推進組織「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が発足した。今回のワークショップはその発足を機に開催されたものだ。
ワークショップには、ITU-Rで5Gの標準化を担うWP5D(携帯電話を所管するワーキンググループ)、欧州、中国、韓国、日本の5G推進・研究組織の幹部が参加。プレゼンテーションやパネルディスカッションを通じて、各陣営の5Gに対する考え方が見えてきた。
総務省 総務大臣政務官の長谷川岳氏、ITU-R研究委員会 担当部部長のコリン・ラングリー氏の挨拶に続いて行われたプレゼンテーションの口火を切ったのは、9月30日の設立総会で5GMFの会長に選任された京都大学特任教授・名誉教授の吉田進氏である。
第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)会長を務める吉田進京都大学特任教授・名誉教授 |
今回のワークショップの組織委員会委員長も務めた吉田氏はまず、「現時点では5Gについての決まった定義はなく、2020年以降の世界を想定し、移動通信のあるべき姿・ビジョン、コアになる技術が多くの専門家から語られ始めた段階」としたうえで、同氏が5Gで実現されると考える3つのポイントを示した。
その1つが、災害時を含めたさまざまなトラフィック環境下において、高度に適応可能な極めて柔軟なネットワークであること。2つめがM2Mを構成要素に含む、真にヘテロジニアスなネットワークであること。最後が、すべてのものをインターネットに接続できるようにすることで、社会に大きな影響を与えるネットワークであることだ。
吉田氏は、これをあくまで私見と断ったうえで「5Gとは何か」というテーマを「専門家」である5人のプレゼンターに引き継いだ。
ITU-R――2018年に規格提案を募集
次いで講演を行ったITU-RのWP5D副議長のハカン・オルセン氏は冒頭、「通信は100年をかけて10億の場所を、その後25年かけて50億の人をつないだ。そしてこれから15年をかけて500億のモノをつないでいこうとしている。その中で(1)固定通信から移動通信へ、(2)制約のあるデータ通信からブロードバンドへ、(3)端末側のソフトウェアとハードウェアで実現されている機能のクラウドへの移行という、3つのシフトが起きている」と説明。
そのうえで、「IMT-2000(3G)、IMT-Advancedに続いて我々が作り上げようとしているIMT-2020 and beyond(5Gの仮称、正式名称は未定)は、この変化に対応できるもので、重要な社会基盤、経済新興の礎になる」と強調した。
ITU-R WP5D副議長のハカン・オルセン氏 |
WP5Dにおける5Gの議論は、2011年に始まり2012年には検討体制が整備されたが、議論が本格化したのは2014年2月にベトナム・ホーチミンで開かれたWP5D会合からである。現在はここで提起された3つの文書の策定作業が進められている。
その文書とは、5Gの基本コンセプトや要求条件などをまとめた勧告案「IMT VISION」、5Gを実現するための要素技術についてのレポート「TECHNOLOGY TREND」、5Gで利用が想定されている6GHzを超える周波数帯の利用可能性に関するレポート「IMT above 6GHz」の3つである。
ITU-R WP5Dで策定が進められている3つの文書 |
オルセン氏は、「これらの文書の策定は2015年11月に開かれる世界無線会議(WRC15)の準備となる」と解説した。これらの文書に基づき、2018~2019年に開かれる次のWRCの検討テーマとして、6GHz以上を中心とした5G用新周波数の確保を盛り込むことを提案しようというのである。
さらに、WP5Dでは2016年から2017年にかけて、IMT VISIONで示された要求条件の評価方法などを検討。2017年後半にこれを公表し、2018年に5Gの規格提案を募集する予定だという。その後行われる審査に合格し、ITU-Rで2020年頃に承認(勧告化)される技術規格が「5G」となるのだ。