ボーダフォンのM2M事業戦略「強みは世界最大のグローバルネットワーク。日本市場には大きな可能性がある」

多様なデバイスや機器を通信ネットワーク経由でコンピュータと接続することにより業務の効率化や新たなビジネスの展開を可能にするM2M。このソリューションを世界規模で展開、トップを走るのが世界約30カ国で自社のネットワークでモバイル通信事業を手掛ける英ボーダフォンだ。日本オフィスでM2Mカントリーマネージャーを務めるティモ・ハロネン氏にボーダフォンのM2Mへの取り組みとその可能性を尋ねた。


――ボーダフォンはどんな形でM2M事業を展開しているのですか。

ハロネン M2Mはボーダフォンの事業の中でも特に成長性の高い分野です。英国のリサーチ会社(Machina Research)のレポートでは、2011年に6百万回線強だったボーダフォンのM2Mの接続回線数は13年には約14百万回線になり、他の通信事業者を抑えてトップに立ちました。今年の7月の時点では自動車、公益・エネルギー事業など様々な分野で17.5百万回線が使われています。(図表1)

図表1 グローバルセルラーM2M接続数(14百万回線/14年3月時点)
グローバルセルラーM2M接続数

こうした大きな伸びを可能にした要因の1つに、我々のグローバルネットワークがあると考えています。当社はイギリスやドイツ、ニュージーランド、オーストラリアなど約30カ国で自社のモバイル通信ネットワークを展開しています。さらに約50社のパートナー事業者のネットワークがあり、デバイスとの接続が可能です。また、当社が独自に開発した「グローバルM2Mプラットフォーム」を介してさまざまなSIMの管理機能をご利用いただけます。現時点でこうしたグローバルなM2Mサービスを提供できる通信事業者はボーダフォン以外にありません。これが我々の大きな強みとなっているのです。

全世界で350~400名がM2Mの専属部隊として活動しており、マンパワーの面でも他社をしのいでいます。M2Mという言葉がなかった20年前からこの分野でビジネスを行っており、経験や専門性においても我々は大きなアドバンテージを持っていると考えています。

アジア・太平洋地区がM2Mの普及を牽引

――M2Mの世界市場はどのような状況にあるのでしょうか。

ハロネン ボーダフォンでは昨年に引き続き今年もM2Mの普及状況についての調査を実施しました。この調査は中小企業から従業員数が1万名を超える大企業まで世界の600社を対象に行ったもので、マネジメントクラスの方にM2Mの導入状況、M2Mへの期待と課題、今後の展開について、ご回答いただきました。その結果に踏まえて最近のトレンドをお話しましょう。

昨年から今年にかけ、北米、欧州、アフリカ・中東・アジア太平洋(AMEAP)の各地域でM2Mソリューションの導入比率が大きく伸びています。特にAMEAPではM2Mを導入している企業の割合が12%から27%に増えました。これには中国でスマートメーターの普及が進んだことなどが寄与していると考えられます。(図表2)

図表2 地域別M2Mソリューション導入企業
地域別M2Mソリューション導入企業

欧州や北米でも今後普及が加速して、2016年にはAMEAPと北米で56%、欧州でも53%の企業がM2Mを導入すると予測されています。今まさにM2Mのマーケットがグローバルレベルで大きく広がろうとしているのです。(図表3)

図表3 M2M導入予定の企業
M2M導入予定の企業

業界別では、昨年から今年にかけ家電、エネルギー・公益事業、自動車の3つ分野で普及率が大きく伸び、28~29%の企業でM2Mソリューションが活用されるようになっています。これらの業界がM2Mの導入を牽引していると言えます。(図表4)

図表4 業界別M2Mソリューション導入企業
業界別M2Mソリューション導入企業

――企業はどのような目的でM2Mを導入しているのですか。

ハロネン 我々は企業がM2Mを導入するのには大きく5つの狙いがあると考えています。

その1つが「オペレーションの効率化」です。M2Mでデータをやり取りすることにより業務プロセスの最適化・自動化が可能になるのです。

2番目が「成長」。M2Mの活用により、新しいビジネスを実現しようということです。

3番目が「顧客満足度の向上」。リアルタイムで情報を得ることで顧客ニーズにあったサービスをタイムリーに提供することが可能になります。

最近多く見られるようになったものに4番目の「コンプライアンス」――法規制などへの対応があります。例えば英国では2020年までに各家庭にスマートメーターを導入することが義務付けられました。欧州では新車には事故が発生した際に自動的に緊急通報を行うe-callの搭載が求められるようになっています。

最後が「持続可能性」。1番目のオペレーションの効率化などにより継続的にビジネスを成長させていこうということです。

最近の傾向で見逃せないのが、M2Mの導入が大企業だけでなく、中小企業にもM2Mを積極的に活用してイノベーションを実現しようという動きが広がってきていることです。

例えば、韓国では社員20名位のベンチャー企業がM2Mを採用したセンサー付のゴミ箱を開発して、ゴミの量を管理するソリューションを提供しているケースがあります。中小企業にとってはM2Mの活用による革新的なソリューションの提供が、大企業以上に重要になってきているといえるでしょう。

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