――エコモットがM2Mビジネスに参入したのは、ずいぶん早い時期だと聞きました。M2MやIoTといったキーワードが今ほど一般的ではなかった時代に、北海道の地でM2Mビジネスが芽生えた背景について教えてください。
入澤 エコモットがM2Mに取り組み始めたのは、北海道という立地条件と密接に結びついています。というのも、エコモットが最初に取り組んでいたのは、ロードヒーティングの効率化だったからです。北海道のマンションやアパートの多くは、駐車場にロードヒーティング機能を備えています。ボイラーで沸かした温水を地中に通すことで雪を融かすもので、マンション選びの基準として重視される人気設備ですが、ランニングコストが高いのが頭痛の種でした。降雪センサーでボイラーをオンオフするのですが、雨による誤検知など無駄な運転時間が長かったのです。
エコモットはこのロードヒーティングの無駄に目をつけ、マンションオーナーが遠隔地からロードヒーティングを操作できる仕組みを作りました。さらに操作の負担さえも肩代わりできるよう、ロードヒーティング管理のアウトソーシングサービス「ゆりもっと」を始めたのです。ロードヒーティングの運転時間を最小限に抑えることで、30台ほどの駐車場で約1万リットルだった年間灯油使用量を、約7千リットルにまで削減します。
こうしたサービスを提供するに当たり、降雪センサーと監視カメラを使った遠隔監視システムや、いくつものマンションのロードヒーティングを効率的に集中管理する仕組みができあがりました。M2Mという技術ありきではなく、地元の皆様のニーズに応えるために必要なシステムづくりに取り組んだ結果、できあがったM2Mソリューションなのです。
ロードヒーティング、建設現場など現場で鍛えられ、育てられたM2M
――M2MやIoTをどのように実際のビジネスに結び付けていくか、知恵を絞っている企業が多い段階だと思います。そのような中で、ニーズを満たすための手段としてM2Mを採り入れ、ソリューションを育ててきたということですね。
入澤 技術や製品ありきの開発ではなく、現場の課題に基づいたソリューションの中でM2Mやクラウドの特性を引き出すノウハウを蓄積してきました。
先ほど紹介したロードヒーティング監視サービスのゆりもっとでは、駐車場に設置した降雪センサーと監視カメラからモバイルネットワークを使って現地の情報を収集します。必要に応じて監視センターから遠隔操作でロードヒーティング装置のオンオフ操作を行なうため、一方的な情報収集ではなく双方向性を確保しているのが特長です。(図表1)
図表1 ゆりもっとサービス概要 |
複数の機器管理を同時に行なう、収集したデータを処理するインテリジェンスを持つ、他の機器をプッシュで動作させるなど、ゆりもっとで得たノウハウが私たちのM2Mソリューションのベースになっています。
――ゆりもっとの他には、どのようなソリューションを展開しているのでしょうか。
入澤 ゆりもっとの他に、建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」や、商用車両管理ソリューション「Pdrive」を提供しています。核となる製品も独自開発しており、遠隔監視カメラ「ミルモット」などを世に送り出してきました。ミルモットはソーラーバッテリーで動作し、モバイルネットワークを使って通信を行なうので、電源も通信回線も不要で場所を選ばずに使える遠隔監視システムです。
現場ロイドは、このミルモットを軸にしたソリューションです。カメラ映像や各種センサーからの情報を遠隔監視します。先進性と信頼性が認められ、公共工事等における技術活用を推進するNETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています。
國塚 ゆりもっとで培った双方向のM2M通信技術を活かして、様々なセンサーからの情報を処理し、現場に対してアクションを指示できるのが大きなポイントです。たとえば、温度、湿度、黒球温度の3点のセンサーデータを取り込み、それらをサーバー内で演算させ、
熱中症指標の国際規格「WBGT」値を算出し、ほぼリアルタイムに計測しています。
危険水準に達した段階で現場事務所にあるパトランプを鳴動させて注意喚起を行なうといったことが可能です。(図表2)
図表2 現場ロイドサービス概要 |
入澤 単にデータ収集を行なうだけではなく、クラウド上にデータを処理するインテリジェンスを持ち、さらに現場に対してモバイルネットワーク経由でプッシュする仕組みを持っているから実現できるソリューションです。