M2Mビジネスが陥りがちな罠――ビジネス成長の足かせにならないM2Mシステム構築のポイントとは

M2Mを活用したビジネスが珍しくなくなり、成功事例も数多く耳にする昨今。しかし一方で、M2Mをビジネスに活用する際の課題や注意点も浮かび上がってきているようだ。世界のM2Mシーンを牽引するユーロテックグループの一員であるアドバネットを訪ね、橋本武氏に話をうかがった。

――M2MやIoTという単語を、ビジネスの現場で頻繁に耳にするようになりました。流行ではなく定着したと見てよさそうですね。

橋本 そうですね。ビジネスの力として認知も広がり、M2Mだからこそできる新ビジネスも多く立ち上がっています。それに合わせて課題も見え始めています。特に大きな課題だと感じているのが、システムの複雑化です。

みなさん最初は温度だけ収集できればいい、通過人数だけ収集できればいいと、効果を見込みやすいところからM2Mをスタートします。しかし当初の目標を達成してある程度の効果を得ると、より広範囲に、数多くのセンサーを設置したいと思うようになり、温度だけではなく湿度も、電力も、明るさもと、多様な情報を収集したいと考え始めます。さらに集まったデータをもっと多くのアプリケーションで使いたくなり、接続するシステムが増えていきます。こうして、シンプルにスタートしたシステムが拡張を重ね、高度化、複雑化していくのです。

――システムが高度化すればM2Mがより大きな効果をもたらすようになるので、良いことのように思えますが、どこに問題があるのでしょうか?

橋本 高度化や複雑化自体が問題という訳ではなく、複雑化により浮彫になるもうひとつの問題があるのです。それは、M2Mのシステムが拡張を前提に作られていない場合が多いということです。

先の例のように、温度だけ収集できればいいと考えて作ったシステムでは、初期投資を抑えるために温度センサーだけを設置してビジネスをスタートするでしょう。通過人数だけわかればいいという場合も、同様です。しかしこうして最小限の構成で作られたシステムではフレキシビリティに欠け、その後の機能拡張に対応できないことが多いのです。

フレキシビリティを重視したシステムづくりが成長のカギ

――フレキシビリティの低いシステムでは、拡張性の問題に直面するということですね。そうならないためには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。

橋本 確実に言えることは、フレキシビリティを考慮したシステムを構築すべきということです。ITの世界は様々なシステムを互いに影響を与えずに、柔軟に拡張、変更がおこなえるように、システムを疎結合にして共通インターフェイスで結ぶEnterprise Service Bus (ESB)という考えが取り入れられてきた経緯があります。同じことを、M2Mでも考えていかなければなりません。センサー群とシステム群を共通インターフェイスで結ぶハブの機能があれば、センサーやアプリケーションの追加に柔軟に対応できます。

こうした背景からユーロテックが提唱しているのが、M2MにおけるESBの役割を担う、M2Mインテグレーションプラットフォームの導入です。このプラットフォームを採用することで、アプリケーションとセンサーをデカップリング(分離)でき、M2Mシステムのフレキシビリティを格段に向上させることができます。

多くのセンサーやアクチュエータと接続できるようにするため、通信にはMQTTを採用しています。MQTTはユーロテックとIBMが共同開発した軽量な通信プロトコルですが、2011年に無償公開され、今ではオープンスタンダードとして多くの製品に採用されており、ベンダロックインの心配もありません。

M2Mインテグレーションプラットフォーム

先に挙げた例のように、温度だけを管理していたシステムで湿度も管理したくなった場合のことを考えてみましょう。温度だけしか管理できないシステムではほぼすべてを作りなおさなければなりませんが、ユーロテックが提唱するM2Mインテグレーションプラットフォームを使用していれば現地に設置したゲートウェイに湿度センサーを追加設置しゲートウェイを再設定するだけで済みます。

――オープンなインターフェイスを持つハブがあれば、ビジネスの成長に伴うシステム拡張にも柔軟に対応できるという訳ですね。将来を見越したシステム設計という点で、ほかに気を付けるべき点はあるのでしょうか。

橋本 もうひとつ気にすべきポイントとしては、リモートでの管理機能が挙げられます。わかりやすい例として、ふたたび温度管理に湿度管理機能を加える場合を考えてみましょう。

M2Mインテグレーションプラットフォームがあればシステムの根本的な改修は不要になりますが、現地での湿度センサーの追加設置とゲートウェイの再設定は相変わらず必要です。センサーの設置場所が多く、広範囲に広がっている場合にはこれだけでも大きな負担になります。ところが、現地のゲートウェイをセンター側からコントロールし、リモートで再設定できるとしたらいかがでしょうか。

実はユーロテックのサービスゲートウェイにはOSGi(Open Services Gateway initiative )という仕組みが搭載されています。これはJavaベースのアプリケーションを動作させるためのプラットフォームで、こちらもオープンな規格です。アプリケーションはネットワーク経由でインストール、起動、停止できるので、現地に赴くことなく機器の動作を変更できます。オープンソースの開発環境「Eclipse」が使えるので、技術者の確保が容易なのもポイントです。

Everywareデバイス・クラウド

センサーの追加設置程度であれば高度な技術は不要なので、センサーのみ送付して現地スタッフに設置してもらい、センターからリモートでアプリケーションを追加すれば、技術者を現地に送り込む必要はなくなります。

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