<特集>AI運用のリアルドコモが挑むAgenticOps 5G安定稼働へAIと人が協働

AIエージェントが状況を分析して行動する運用モデル「AgenticOps」。商用環境で、すでに大きな成果を達成しているのがNTTドコモだ。5G網の保守と5Gコア設計構築の自動化に踏み切った。

「マルチエージェント構成で、100万台以上のノードから収集したデータを基にネットワークの状況を把握。異常検知から原因推定、対処案の提示までを自律的に行う」

NTTドコモ ネットワーク本部 サービスマネジメント部 オペレーションシステム OPSストラテジー担当課長の竹下恵氏は、2026年2月に商用稼働した「モバイルネットワーク保守業務向けAIエージェントシステム」についてそう語る。5Gネットワークの運用監視・保守業務を、複数の役割・機能を分担するAIエージェントと人間のオペレーターの協働によって遂行する。

NTTドコモ ネットワーク本部 サービスマネジメント部 オペレーションシステム OPSストラテジー 担当課長 竹下恵氏

NTTドコモ ネットワーク本部 サービスマネジメント部 オペレーションシステム OPSストラテジー 担当課長 竹下恵氏

まず注目すべきは、その規模だ。全国各地の携帯電話基地局やコアネットワーク、それらをつなぐトランスポートネットワークまで、総計で100万台を超える装置群から集められた情報をAIエージェントが分析。これにより、「従来のルールベースや機械学習による自動化では検知・対処が難しかった『複雑故障』に対応すること」が本システムの目的だ。

熟練技術者を凌ぐ「AIの強み」

複雑故障とは、運用ノウハウを積み重ねた熟練技術者でなければ原因特定や対処が困難な故障のことだ。装置がアラームを発しないまま性能が徐々に劣化していく「サイレント故障」がその代表例である。警報が鳴らないため、“つながりにくい”“通信が遅い”といったユーザーからのクレームで発覚することが多い。

また、1つの装置の故障が隣接する装置へ連鎖・波及し、膨大なアラームが発生することで根本原因の特定が困難になるようなケースもある。これらは頻度が低いものの、発生した場合は重大なサービス停止を招き、復旧には多大な労力を要する。

熟練技術者は、これにどう対処してきたのか。サイレント故障が疑われる特定の事象を見抜き、経験に基づいて「ここが怪しい」とあたりをつけて分析方法を決定する。障害箇所や原因の特定にはログデータが必須だが、装置故障時にはその一部が欠損している場合も多い。熟練者は、欠損データを暗黙知で補完して判断することにも長けている。

ドコモが商用化したAIエージェントシステムは、これをそのまま模倣するわけではなく、AIの強みを活かしたアプローチを採っている。「AIは熟練者に比べると考える能力は劣るが、圧倒的に広い範囲のデータを網羅的に見ることができる」と竹下氏。この特徴を活かし、AIは最初から全データを網羅して分析を行う。異常を検知して要因を推定し、対処法を導き出すという流れは熟練者と変わらないが、アプローチは根本的に異なる。

AIエージェント異常分析システムの画面

AIエージェント異常分析システムの画面

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