5GCの設計・構築も自動化
AIエージェントを活用して運用高度化を目指すドコモの取り組みは、これだけではない。
同じく2026年2月にドコモは国内で初めて、AWS上に構築した5Gコアネットワーク(5GC)による商用サービスを開始した。この5GCの設計・構築もAIエージェントにより自動化した。ネットワーク本部 コアネットワークデザイン部 5Gコア担当 シニアエキスパートの國友宏一郎氏によれば、「従来は数カ月を要していた作業が数週間程度で完了」し、構築期間を約8割削減できたという。

NTTドコモ ネットワーク本部 コアネットワークデザイン部 シニアエキスパート 國友宏一郎氏
5GCの設計にあたっては、100を超えるドキュメントや過去の設定値を参照する必要があり、複雑な設定ファイルの作成と修正に多大な人手と期間がかかっていた。さらに、関連する装置や周辺システムとの依存関係について整合性を1つひとつ確認する必要もあり、設計後の構築や設定作業にも手作業が発生していた。これらの作業をAIが代替することでリードタイムを大幅に短縮。あわせて、人為的ミスの削減にもつながった。
この取り組みは、突発的なトラフィック急増に柔軟に対応できるよう、5Gネットワークの信頼性・持続可能性を高めることを目的としたものだ。
ドコモの5GCは国内数カ所にあるプライベートクラウドで運用されてきたが、今回それを、AWSのパブリッククラウド上で自動構築した5GCと連携。ハイブリッド環境における5GCの商用サービスを開始した(図表2)。
図表2 AIエージェントによる5GCの自動構築・展開

5Gサービスはプライベートクラウドをメインとして提供しているが、突発的なイベントによってトラフィック需要が急増した場合にはAWS上の5GCを使って容量を迅速に拡大。不要になれば縮小するといった柔軟な運用が可能になる。
5Gコア担当 担当部長の望田英生氏は、世界的に半導体メモリの争奪戦が起きている社会情勢などを引き合いに、「ハードウェアを調達して構築するのにはリスクもある。パブリッククラウドを使って早期に5GCを構築できるようにする取り組みは、突発的な需要増に対応するために必要だ」と今回の取り組みの背景を説明する。

NTTドコモ ネットワーク本部 コアネットワークデザイン部 5Gコア担当 担当部長 望田英生氏
AIエージェントとGitOpsを連携
5GC自動設計・構築もマルチエージェント構成を採用している。
5GC構築の設計においては、(1)インフラストラクチャ層と(2)5GCソフトウェアを配備するアプリケーション層、(3)アプリケーション設定の3つに分けて設計を行っており、それぞれInfraAgentとApp Agent、Config Agentがコンフィグ値の設計や設定ファイルの作成を担当する。さらに、それらを統括するOrchestrator Agentが全体のワークフローを管理する。
このエージェント開発の鍵となったのが、AIに参照させるナレッジの整備だ。これまで設計作業に使われてきたドキュメントはExcelファイルが相互参照する形で管理されており、そのままではAIの学習には使えなかった。複数のファイルを統合したり、暗黙的なルールを明文化したりと、AIが読み込める形に整備し直した。
そして、國友氏がもう1つのポイントとして挙げるのが「Infrastructure as Code(IaC)」だ。自動設計・構築が実現できたのは、インフラ構成をコードとして定義・管理する「IaCが実現できていたことが前提にある」。
今回開発した仕組みでは、インフラとアプリケーションの構成(設定ファイル等)は、ソースコード等の変更履歴を記録・追跡するための分散型バージョン管理システム「Git」で管理する。AIエージェントが生成したコンフィグをGitに渡すと、変更差分を自動検知して実環境へ反映させるGitOpsの手法により、AWS上に5GCを自動構築する(図表3)。
図表3 Agentic AIとGitOpsを組み合わせた5GC設計・構築

ただし、「人間の目」によるチェックも排除していない。「完全自動化も技術的には可能だが、現状では人の判断も必要」と望田氏。今回は世界初の取り組みということもあり、AIエージェントが生成したコンフィグについては、Gitリポジトリに保存された段階で「内容をチェックしたうえで投入する」仕組みとした。Gitで管理しているデータの差分を確認できるdiffという仕組みを使い、コンフィグを精査することで信頼性を担保している。









