「日本型UC」の答えは見えてきたのか?(後編)――シスコとマイクロソフトの取り組み

欧米のようにはいかない――。そう言われ続けて久しいユニファイドコミュニケーション(UC)だが、いよいよ日本企業にも根付く兆しが見えてきている。日本特有のニーズに応えるためのUCベンダーの取り組みを2回にわたりレポートする。後編では、グローバルのUC市場をリードするシスコとマイクロソフトの「日本型UC」への取り組みをを紹介する。

シスコシステムズ――“正面からUC”は難しい、ビデオ・スマホから攻める

シスコシステムズが昨年秋に発売した「Cisco Business Edition 6000(Cisco BE6000)」。これが今、同社の提案の鍵となっている。

BE6000は「Cisco Unified Communications Manager(CUCM)」の機能を核に、各種のコミュニケーション/コラボレーションツールを詰め込んだアプライアンスサーバーだ。H.323/SIPに対応するビデオ端末やIP電話機、UCクライアント「Cisco Jabber」を積んだスマートデバイスと、様々な端末をつないでUCを実現する。

だが、同社がこのBE6000で提案しているのは、「UCではなく、ビデオとスマホの活用」と、コラボレーションアーキテクチャ事業 コラボレーション営業部 エバンジェリストの石原洋介氏は話す。「“コミュニケーションを統合しましょう”という入り方は営業的に難しいケースが多い」からだ。

シスコシステムズ 石原洋介氏
シスコシステムズ コラボレーションアーキテクチャ事業 コラボレーション営業部 エバンジェリスト 石原洋介氏

ビデオについて、シスコは今年、テレビ会議端末のラインナップを一新した。セットアップを簡便化し価格も抑えた「SXシリーズ」や「MX200/300G2」等の導入しやすい機種を拡充。これらの新端末を前面に押し出し、テレビ会議の拡販を進めている。肝心な点は、このテレビ会議端末を接続・制御するのがBE6000、つまりUCサーバーであることだ。電話番号でつながるため誰でも簡単に使えて、しかも、テレビ会議端末もIP電話機もCisco Jabberも相互につながる。

Cisco Project Workplace Cisco Project Workplace
シスコが、ユーザーのビデオ導入を支援するための取り組みとして提供しているWebサイト「Cisco Project Workplace」。参加人数に応じて、最適な端末、設置方法など、ビデオ会議室の作り方をブラウザ画面上で確認できる

ビデオを切り口としつつも、シスコが売っているのは多地点接続装置(MCU)を核とするテレビ会議システムだけではなく、UCサーバーそのものである。したがって、そのユーザーがPBXの更改時期を迎えれば「そのままBE6000にIP電話機を追加すると内線電話も外線電話も使えて、PBXも無くせる」(石原氏)。いつでもUCの世界に足を踏み出せるというわけだ。「この提案が中堅大手にかなりハマっている」という。

スマホ導入からUCへ

もう1つのスマホ活用については、端末内に情報を残さずにメールやグループウェアが使えて、IMやWeb電話帳、内線通話もできるソリューション「スマートフォンシンクライアント」を販売している。スマホの業務活用を検討する企業に対して、セキュリティ対策やコミュニケーションの円滑化、BYODを切り口として提案している。

このスマートフォンシンクライアントも、核になるのはBE6000だ。ユーザー企業内のメール/グループウェア等のシステムとBE6000 が連携し、スマホ内の専用アプリからそれらを利用できる。あわせて、BE6000にソフトバンクテレコムの「おとくライン」やKDDIの光ダイレクト等を接続し、スマホで内線・外線電話もできる仕組みが構築できる。なお、導入コストは「100ユーザーで250万円から」という。

ユーザー企業内の既存PBXとは関係なく、スマートフォンの業務活用を目的にこれを提案。その後、PBXの老朽化に合わせてUCへ、というアプローチは先のビデオ提案と同じだ。法人向けスマホ販売に注力する通信キャリアが積極的に担いでおり、KDDI、ソフトバンク、NTTコミュニケーションズが販売。また、PBXディーラーの販路も広がりつつある。

月刊テレコミュニケーション2014年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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