<連載>AIインフラの新潮流国産ネオクラウドの成長戦略 GPU特化型でAIインフラを安く早く

生成AIの急速な普及を背景に今、躍進中の新興勢力がある。GPU特化型インフラを提供する「ネオクラウド」だ。高まるデータ主権やエッジAIのニーズも追い風に、国内でも新たな市場が形成されつつある。

ハイパースケーラーと協業も

この新興市場を牽引しているのが、米国のCoreWeave、Crusoe Energy、Core Scientific、Lambda Labs、欧州のNebius(蘭)、Nscale(英)だ。AIワークロードに特化することで、SaaSやWebサービスなど様々なワークロードをカバーするAWSやAzure、Google Cloudといったハイパースケーラーと差別化。また、GPU調達能力を強化するため、エヌビディアやハイパースケーラーとの連携も目立ってきている。

例えば、ネオクラウド市場のリーダー的存在であるCoreWeaveはエヌビディアから直接投資を受け、最新GPUの優先供給を受けることで優位性を獲得。CrusoeはOpenAIのDCプロジェクトに参加するなどして、高性能インフラ構築で強みを発揮している。

これらネオクラウドとの協業に力を入れているのがマイクロソフトだ。CoreWeaveやLambda、Nscale、NebiusとGPUアクセスに関する契約を次々と締結。契約金額は総計で300億ドルを超えると見られている。マイクロソフトは数万規模のGPUを利用可能になり、一方、ネオクラウドはMicrosoft Azureユーザーへアクセスする道が拓ける。

同様の動きは、国内でも広がる可能性がある。日本マイクロソフトは4月3日、GPUクラウドを提供するソフトバンク、さくらインターネットとの協業を発表。Azureのユーザーが両者のAIインフラを活用できるソリューションの共同開発をスタートさせた。

安い電力求めて地方展開

欧米でネオクラウドが急成長した要因には、GPUインフラに特化することでコストパフォーマンスの高いサービスを提供し、かつ、GPU不足に悩むハイパースケーラーを大口顧客としてきたことがある。

国産ネオクラウドも、差別化の鍵はコストだ。

GPUaaS一本に事業を絞り込み“国内唯一のGPU専業クラウド”を自称するハイレゾでGPU事業本部 プロダクト&事業開発部 部長を務める川本信博氏は、「いかに安く提供するかにフォーカスしている」と語る。同社の「GPUSOROBAN」の提供基盤は、「GPUに特化することで余計な設備を排除し、電力・空調設備も一極集中で小さい範囲を効率的に冷やす設計を採用している。我々はこのアプローチで、大きくコストを削減したDCを構築している。」

ハイレゾ GPU事業本部 プロダクト& 事業開発部 部長の川本信博氏

ハイレゾ GPU事業本部 プロダクト&事業開発部 部長の川本信博氏

立地の選定も重要な要素となる。

ハイレゾが2019年にDCを設立した石川県志賀町は「北陸電力管内での電力価格の安さと地域産業振興への貢献」が選定理由という。その後も佐賀県玄海町、香川県高松市と綾川町に、自治体から無償貸与を受けた廃校をリノベーションしてDCを開設(写真)。ユニークな戦略で建設コスト削減を実現している。ハイレゾが2026 年3 月に開業した綾川町データセンター

ハイレゾが2026年3月に開業した綾川町データセンター。旧・綾上中学校を活用した。体育館下のスペースをデータセンターに改装。校舎の教室部分は、地域住民らが集まるコミュニティスペースとして活用する計画だ

GMOも、福岡拠点でGPUクラウドを提供している理由は「九州電力の電気料金の安さ」(武田氏)だ。加えて、エンジニアが北九州拠点に集中していることから、「安い電力と現場に駆けつけられるエンジニアのセットが安定運用の基盤となっている」。石狩DCをGPUクラウドの提供基盤としているさくらインターネットも同様で、比較的安価な電力に加えて、社内にエンジニアを多数配置していることが強みとなっている。

通信事業者の強み活かす

性能・機能差による差別化も進んでいる。「最新世代のGPU」を武器に市場参入したのがKDDIだ。

シャープ堺工場跡地に建設した大阪堺DCを2026年1月に稼働したKDDIは同月より「KDDI GPU Cloud」のトライアルを開始。4月から正式提供を始めた。

最大の売りは、国内初となる「NVIDIA GB200 NVL72」の提供だ。NVL72は、72基のGPUを1つのラックに統合し、最新の高速接続技術である第5世代NVLinkで接続しており、「1つの大きなGPUとして利用できる点が特徴だ。ハイパースケーラーすら日本リージョンでは提供していない」と、プロダクト企画開発本部 AI・クラウドサービス企画部 副部長の佐藤康広氏は話す。トライアル顧客からは、エヌビディアのHopper世代(H200)によるクラスターと比べて「パフォーマンスが3倍以上向上したと評価されている」。

KDDI AI・クラウドサービス企画部 副部長の佐藤康広氏

KDDI プロダクト企画開発本部  AI・クラウドサービス企画部 副部長の佐藤康広氏

このNVL72は1ラックあたりの電力密度が130kWにも達し、かつ水冷システムが必須となる。先端技術企画本部 AIプラットフォーム企画部 部長の桜井敦史氏は、「既存の国内DCでは、水冷に対応できていないところがまだ多く、大規模改修か新設が必要だ。工場を転用し、当初からAIインフラ向けに設計・建設した大阪堺DCであれば大規模に水冷システムを提供できる」と優位性を強調する。

KDDI AIプラットフォーム企画部 部長の桜井敦史氏

KDDI 先端技術企画本部 AIプラットフォーム企画部 部長の桜井敦史氏

また、通信事業者としての強みも活かす。ネットワークサービス「KDDI WVS」を使って、「お客様拠点と堺DCを最大100Gbpsで直結。ハイパースケーラーとも閉域接続できる」(佐藤氏)。オンプレミスおよび既存のクラウド環境に蓄積したデータをAI学習に使いやすい仕組みを用意している。

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