低遅延/ソブリンAIから先行
ソフトウェア面でも、商用展開を意識した機能の開発が加速している。AI-RANの核となるソフトウェアは、計算資源の需要をリアルタイムに把握し、RAN処理とAI処理に動的に配分するオーケストレーターだが、外部のAIワークロードからの要求に応じて計算資源を柔軟に提供できる“仲介役”の機能も欠かせない。ソフトバンクとノキアは2月、このリソース配分・活用機能を開発(図表5)。外部AI需要を実行できる構成を具体的に示したことで、AI-RANアーキテクチャとユースケースの検討がさらに加速すると期待される。
図表5 AITRASオーケストレーターによる外部のAIワークロードへの対応

AI-RANの具体的な使い道については、ユーザー/デバイスに近いロケーションを活かした低遅延・リアルタイム系AIサービスが先行すると見られている。滝沢氏はコンシューマー向けのユースケースとして、「スマートグラスを介したリアルタイム翻訳やAIアシスタント、パーソナライゼーション」を例に挙げる。法人向けでは、ロボットやドローン、自動運転車両などの遠隔操作・制御に不可欠な超低遅延なAI推論基盤としての活用が見込まれる。
ソブリン性も、ユースケース開拓の鍵の1つになる。工場、病院、物流拠点等で、機密データを外部に出さずにAI解析を行うセキュアなエッジ基盤として、通信事業者が自社インフラ上で提供できるのは大きな差別化要因だ。
では、AI-RANはいつ頃商用化されるのか。全国レベルで本格展開されるのは“AIネイティブ”な6G時代となろうが、それに先立ち5G既存網への導入は近いうちにスタートすると考えられている。例えば、新規周波数帯の導入時に設備更新と合わせてマイグレーションに着手するといった形だ。商用導入に向けては、「従来のRAN設備と同等レベルの消費電力・コストを実現することが重要。エヌビディアとそこを目指して取り組んでいる」と小久保氏は語る。
通信事業者の側には、調達計画・実装・運用フローの刷新が求められる。専用ハードウェアからソフトウェア定義の汎用サーバーベースへ移行することで、機器管理や運用フローの大幅な見直しが必要になるからだ。「無線工学、AIエンジニアリング、ソフトウェア定義ネットワークの3つの専門知識を兼ね備えた人材の育成」も課題になるとアトリ氏は指摘する。通信事業者とNEPだけでなく、SIerなど様々なプレイヤーとの連携が不可欠になる。
[月刊テレコミュニケーション 2026年5月号の記事を再構成]











