【連載】ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験- の目次はこちら
5Gでミリ波が担う役割は当初から明確であった。すなわち、他の周波数帯では到達し得ない超高速・大容量の通信性能を、限られたスポットに高密度に供給するという点である。
日本市場においても28GHz帯が各通信事業者に割り当てられ、多くの基地局が整備されている。しかし、現実にはミリ波が扱うトラフィック量は依然として極めて限定的であり、「基地局は存在するが使われていない」という状況が続いている。
これは必ずしもミリ波という周波数帯そのものの欠点を意味するわけではないが、一般には“ミリ波は届かない” “LOS(Line of Sight、見通し)でしか使えない” “アップリンク(UL)が弱い” といったイメージが先行し、ミリ波は扱いにくい技術であるという印象が強く残ってきた。
しかし、この評価には重要な前提が抜け落ちている。
ミリ波を取り巻く構造は、①ミリ波端末(デバイス)、②ミリ波インフラ(基地局)、③ミリ波ユースケース(使い道)が互いに依存し合う“三すくみ”の関係にあり、いずれか1つが弱いと他の2つも成長しないという性質を持つ(図表1)。現在の日本でミリ波が十分に活用されていない背景には、この3要素のうち「端末」 による制約が最初のボトルネックとして立ちはだかっていたことが大きい。
図表1 ミリ波の三すくみを端末観点から活性化させていく

端末側から三すくみを動かす
ミリ波端末の大半を占めるスマートフォンには、アンテナ開口、消費電力、姿勢変動、人体遮蔽といった構造的な制限が存在する。これらはミリ波通信と最も相性の悪い要素であり、この“端末工学的制約”ゆえに、ミリ波は本来の性能を発揮できていなかった。
それにもかかわらず、スマートフォンという制限の多いデバイスで得られた体験をそのまま“ミリ波の限界”と解釈してしまった結果、ミリ波に対するネガティブな評価が固定観念として広がっていった。
本連載の第2回で述べられていたように、ミリ波に付随する多くのネガティブバイアスは「スマートフォン主体で見たときの見かけの性質」に過ぎず、ミリ波が本来持つ通信能力を正しく反映したものではない。
だからこそ、この三すくみの循環を前に進めるには、まず、端末側の制約を取り除くアプローチが必要になる。端末がミリ波を十分に活用できる形に進化すれば、インフラの価値は自然と引き上げられ、ユースケースも生まれ、3要素がプラスに回り始める。
今回私たちが「端末側から三すくみを動かす」という考えのもと取り組んできたのは、まさにこの構造的問題への回答である。スマートフォン依存から脱し、ミリ波の利点を最大限引き出すための新たな端末アプローチ、すなわち高利得アンテナ・高出力送信が可能なCPE(Customer Premises Equipment)やHPUE(High Power User Equipment)対応機器こそ、三すくみを活性化する起点となりうる。
端末が変われば、インフラが“使われる”ようになり、使われればユースケースが拡大し、その結果としてミリ波エコシステム全体が成長していく。













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