革新的技術「ミリ波中継器」を構成する3つの技術
これらの事例から得られた知見をもとに、KDDIは革新的な技術の開発に取り組んでいる。その中核を担うのが、京セラと共同で開発した「ミリ波中継器」だ。本中継器は、従来の固定的なレピータと異なり、自律的にエリアを形成し、動的に最適な通信ルートを選択・切り替えることができる点が特徴である。
本中継器は、次に示す3つの技術で構成されている(図表3)。
図表3 ミリ波中継器の3 つの特徴

■自律的なエリア形成
従来の中継器は基地局からの電波を固定的に中継していたが、本中継器は、周囲360 度方向に信号をサーチし、最も強いミリ波の到来方向に対して受信方向を定め、その他の方向に関して、広範囲にミリ波エリアを拡張する。これにより、ミリ波エリアの自律的なエリア形成と効率的なエリア拡張を実現する。
■中継ルートの最適化
従来の中継器は、周辺環境が変化し中継器が電波を受信できなくなると、都度アンテナの調整が必要であった。
本中継器はリアルタイムに無線品質を確認し、信号の劣化を検知した場合、最適な中継ルートを計算し瞬時にルートの切り替えを行う。建物建設や樹木などの環境変化により中継ルートが遮蔽された場合も、最適な中継ルートを自律的に選択し、ベストなミリ波通信をお客さまに提供することが可能となる。
■小型・軽量化
従来の基地局と比べてサイズと重さを約7割削減。重さはわずか4.9kgで電源ケーブル1本だけで運用可能なため、設置場所の自由度が高まった。さらに、バックホール回線も不要なため、コストと運用負担の大幅削減も実現した。
西新宿での実証と商用導入効果
KDDIは2024年より、西新宿のビル街を中心に、小型・軽量なミリ波中継器を設置し、都市インフラを活用した実証を行った。
従来、基地局はビル屋上などの高所に設置してエリアを構築するのが一般的であるが、上述したとおりミリ波は周波数の特性上、エリアが狭く、離散的となる課題があった。そこで、お客さまにより近い街路灯や地下出入口といった公共資産を利用し、ミリ波中継器を設置し基地局からの電波を中継することで、道路のミリ波カバー率を従来の33%から99%へ大きく拡大させることに成功した(図表4)。
図表4 西新宿ビル街でのミリ波中継器実証

この実証により、都市のインフラを活用したコスト効率の良い高速通信環境の構築が可能となった。
さらに、2025 年3月末にミリ波中継器を商用導入し、エリア拡張効果を確認したところ、導入前後でミリ波でのデータ通信量が4?5 倍に増加した。より多くのお客さまがミリ波通信を利用する機会が増加したと考えられる。
JR新宿駅での実証と結果
2025年4月には、東日本旅客鉄道(以下「JR 東日本」)と連携し、多くの列車や人が行き交う新宿駅の埼京線ホームでの安定的なミリ波通信の実証を行った。新宿駅周辺やホーム上に計4 局のミリ波中継器を設置した結果、自律的なエリア形成によって基地局の電波が届きにくい駅ホームの高架下までも通信エリアとして拡大することに成功した(図表5)。
図表5 ミリ波中継器設置前後のミリ波エリアの比較

さらに、駅のホームは列車の往来や混雑状況によって通信環境が大きく変化する。そのような環境下でもミリ波中継器が常に最適なルートを選択して電波を中継することで、1Gbpsを超える通信速度を、安定して維持できることを確認した(図表6)。
図表6 列車通過前後の通信速度の比較

これにより、鉄道をはじめとする法人用途へのミリ波活用においても、通信環境が大きく変動する場面でミリ波を活用できる本中継器の技術的な実用性を確認することができた。今後の様々な業界におけるミリ波活用の拡大につながると考えられる。














