<連載>ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験-[第10回]KDDIが開発した新型「ミリ波中継機」、その実力を新宿で検証

とどまるところを知らない帯域需要の増大に、5Gネットワークは果たして応え続けることができるのか。ミリ波が、その切り札の1つになることは間違いない。そのポテンシャルを最大限に引き出すには、電波が飛びにくいという弱点を補う効率的なエリア展開と、ユースケースの創出が欠かせない。革新的な中継技術の開発や、映像伝送をキーとした用途開拓に注力するKDDIの取り組みをレポートする。

KDDIのミリ波活用事例【1】渋谷の待ち合わせ場所

KDDIはこれまで、さまざまな環境にミリ波基地局を設置し、エリア展開を進めてきた。ここでは、その代表的な事例を紹介する。

日本を代表する繁華街である渋谷駅ハチ公前は、多くの人々が待ち合わせや観光、ショッピングのために集まる。こうした繁華街エリアに対しても、ミリ波エリアの展開を積極的に進めている。

図表1 渋谷駅ハチ公前のミリ波エリアとDL スループット

図表1 渋谷駅ハチ公前のミリ波エリアとDL スループット

図表1の写真は、渋谷駅ハチ公前周辺のミリ波エリアの状況を示したものだ。歩行測定を行った地点を青色のプロットで、そのうちミリ波が受信できたエリアを橙色のプロットで示しており、ミリ波の信号が安定して受信できた範囲を可視化している。ハチ公前周辺には、街路樹や広告看板を掲示した建物など、ミリ波を遮る遮蔽物が多く、その影響でミリ波エリアは離散的に点在していることがわかる。

また、図表1のグラフは、ハチ公前周辺でのミリ波のダウンリンク(DL)スループットを示している。都心部の混雑環境においても、ミリ波を使って通信することができれば、他の周波数と比較して数十倍の非常に高速な通信が可能である。

本事例から、都市の繁華街や公共空間において、ミリ波は極めて高いスループットを提供しうる一方で、遮蔽物の影響を受けやすくエリアを面的かつ連続的に拡大することの技術的な課題が見て取れる。

KDDIのミリ波活用事例【2】原宿駅ホーム

次に、原宿駅ホームにおける事例を紹介する。

原宿駅は、若者を中心に多くの乗客が利用する駅であり、土日やピーク時間帯には通信需要が非常に高まる場所である。こうした需要に対応するため、図表2の左の写真に示すように、原宿駅周辺2カ所にミリ波基地局を設置し、ホームを含む駅全体をカバーするよう設計をしている。

図表2 原宿駅のミリ波エリアとDL スループット比較

図表2 原宿駅のミリ波エリアとDL スループット比較

一方で、電車がホームに入線した際には、ホーム上のユーザーとミリ波基地局の間に電車が入り込むことでユーザーからミリ波基地局への見通しが確保できなくなる。こうした遮蔽が発生すると、図表2の右のグラフが示すようにDLスループットが低下し、通信速度は電車の入線前と比較して一時的に半分以下に落ち込む。

このように、駅のような通信需要が高い場所において、ミリ波は大容量通信を実現するうえで非常に有効な手段である。一方で、列車の入線・発車などにより無線環境が大きく変動しやすく、安定したエリアを維持するには、こうしたダイナミックな環境変化への対応が必要となる。

柴山昌也(しばやま・まさや)
KDDI所属。2015年よりKDDI総合研究所にてミリ波の特性分析に従事。2019年にKDDIに帰任し、2022年から現在までグループリーダーとしてミリ波エリアを効率的に拡張する中継技術の開発を主導

小林龍司(こばやし・りゅうじ)
KDDI所属。2019年より5Gに関わる基地局新機能の要件定義や新技術検討を担当。その後先進技術の検討・開発・評価の業務に従事。主に高周波数帯域であるミリ波の技術検討を行い、KDDIのミリ波活用検討を推進中

相楽昌希(さがら・まさき)
KDDI所属。これまで2.3GHz帯周波数共用や28GHz帯ミリ波利活用推進などの業務に従事。周波数利用効率の向上を通じたモバイルネットワーク高度化に取り組み、どこでも高速・高品質な通信環境の実現を目指している

櫻井博貴(さくらい・ひろき)
KDDI所属。西新宿や新宿駅でのミリ波中継器実証をはじめとする、28GHz帯ミリ波の新技術検討・開発などの業務に従事。5Gの高度化と新技術の普及を促進し、より高速で快適な通信環境の実現を目指している

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