電通大 藤井教授「日本のワイヤレス産業復活 必要なのは人材と基盤技術」

日本のワイヤレス産業の行く末を懸念する声が強まっている。経済安全保障のリスクも高まる中、日本の通信インフラが「海外依存」になっていいのか。総務省の電波有効利用委員会の主査や情報通信成長戦略官民協議会の構成員を務めるなど、ICT政策にも深く関わる電気通信大学の藤井教授に、人材育成や産学官連携の重要性、次世代ワイヤレス技術の展望などを聞いた。

低空域経済圏ネットワーク

――人材育成や研究開発における産学連携の話が先ほどありましたが、大学発のワイヤレス技術を日本の国際競争力強化にもっと活かすべき、といった声もあります。

藤井 例えば中国の場合、大学が標準化作業に参加するなど、企業と大学が協力して活動している姿が目立ちますが、日本はそうした活動が少し弱いです。

その背景には、大学側がビジネスにあまり興味を持っていなかったり、企業側に大学の研究をマネジメントする体制がないこともあるのでしょう。

実は、日本の若手の研究者たちは結構いろいろと面白い研究を行っています。しかし、それが企業側には見えておらず、分断されてしまっている状況は非常に歯がゆいです。大学が育て上げた技術を標準化作業の舞台に持っていくなど、両者がもっとうまく連携して海外展開していくために必要な流れを作れないかと思っています。

――大学発スタートアップ等も期待できそうですか。

藤井 ワイヤレス技術単体で考えると、スタートアップが次々と出てくるような分野ではないとは思います。しかし、周辺領域と融合した形であれば、おそらく魅力的なビジネスや技術が今後たくさん出てくるでしょう。

例えば、ドローンなど低空域経済圏向けのネットワークです。

地上の電波状況は皆さん大体分かっていますが、上空にはまだ分からない部分も少なくありません。地上向けに最適化されているセルラーネットワークを活用しつつ、地上には悪影響を及ぼさない形で共存しながら、どういった低空域経済圏向けネットワークを構築していくかは非常に面白いテーマの1つです。

また、自動運転やロボットを含めたフィジカルAIにも注目しています。リアルタイム制御の確実性をどう確保するかなど、「AIにはどんな無線通信が必要か」という新たな視点が重要になっています。

日本の波はまた来る

――だいぶコモディティ化してきたようにも見えるワイヤレス技術ですが、まだまだ進化の余地はあるということですね。

藤井 ワイヤレス産業の歴史を振り返ると、かつても「無線にはもうやることがない」と言われた低迷期はありました。例えば、NTTからドコモが分社化された1991年頃がそうだったと思います。

その後、ワイヤレス産業は復活し、現在まで主流の時代が続きました。今後どうなるかは分かりませんが、いずれにせよ波は確実にあります。そして、コモディティ化が進む中、弱体化してきた日本のワイヤレス産業にも、また活躍できる波も来ると思うのです。

ですから、日本復活のチャンスをしっかりと見極めていく必要がありますが、その次のステップを迎えたとき、日本に人材がいなければ何もできません。

産官学の3つがしっかり連携して人を育てて産業界に送り込み、力を付けた人たちが海外にも影響を与える活躍をしていく─。次のステップに向けた仕組みづくりが今まさに必要だと考えています。

藤井 威生(ふじい・たけお)氏

1974年東京生まれ。1997年慶應義塾大学理 工学部 電気工学科卒業、2002年同大学院 理工学研究科 電気工学専攻 後期博士課程修了。2006年に電気通信大学 先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター 助教授、2015年に同教授。博士(工学)

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