企業におけるSDN化の実態と将来像とは?――野村総研の木下氏が解説

「SDNはいずれは『入れざるを得ない』技術」「L4-7を置き去りにして仮想化の議論をしても意味がない」「課題は運用管理」……。野村総合研究所(NRI)上級コンサルタントの木下貴史氏が、「企業におけるネットワーク仮想化の将来像とマイグレーション」と題して講演した。

SDN導入に適している企業とは?

ここまでSDN導入/検討企業のSDN観について紹介してきたが、それでは今からSDNに関する検討をスタートさせる企業は、何をポイントに議論を進めていけばいいのだろうか。

木下氏はまず、「急激な変化や臨時的な需要への対応が必要かどうかで、SDNという技術がマッチするか決まってくる面がある」とアドバイスした。ネットワークの柔軟な変更が必要な企業であるほど、SDNを採用するメリットは大きいといえる。

企業がSDNを導入する意義(1)
企業がSDNを導入する意義(1)

もう1つの視点として木下氏が挙げたのは、アプリケーションや人・時間・資金における制約条件の多さだ。例えば、アプリケーションの抜本的な変更は難しいケースで、SDNならば必要な変更をネットワーク側で吸収できるかもしれない。

また、ネットワーク管理者の人的リソース不足、迅速なネットワークの構築・変更、コスト削減といった課題を抱える企業においても、SDNの「ネットワーク状況の可視化」「ネットワーク機能の最適配分」「コントロールの自動化・一括化」「マルチベンダ化(オープン化)」といった特徴が解決策となる可能性は高い。

企業がSDNを導入する意義(2)
企業がSDNを導入する意義(2)

多くの企業は5~10年スパンでSDN化を計画

ただ、木下氏は「では、『今すぐSDNにしよう』となるかといえば、そうではない」とも話した。問題は、「やはり運用管理が今よりも悪くなってはならないことだ」。

木下氏によれば、プライベートクラウド化に取り組んだ企業は、コスト削減などで思いのほか大きな効果を得られているという。しかしその一方で、次のような課題も見られるそうだ。「プライベートクラウド化を進め過ぎたことで、原因の切り分け分析が難しくなり、気付いたときにはトラブルシューティングが大変になっている企業がある」

こうしたなか、「SDNがそれを解決するものなのか、もしくは、混乱を増大させるものなのか。この点に関しては、おそらく今年くらいから出てくる様々な技術に依るのだろう」と指摘した。今はまだ不透明な状況にあるという。

さらに木下氏は、SDNへの移行パス例として、SDN導入/検討企業の3社目に登場した金融機関のケースを紹介した。同社はデータセンターのSDN化について、第1ステップとしてファブリック導入によるネットワークのフラット化、次にデータセンター間の接続、そして最終的にソフトウェア型のネットワークインフラへ移行するというロードマップを考えているそうだ。

ある金融機関におけるSDN化ロードマップ
ある金融機関におけるSDN化ロードマップ

このような移行パスは、データセンターのSDN化の典型的パターンといえるが、「多くの企業は、これ全体で5年から10年スパンで考えている」という。

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