スマート工場・倉庫実現に向けたローカル5Gの3つの課題
FMSの真価は、エレベーターなどの建物設備と多数の搬送ロボットを統合的に制御できる点にある。ただ、そのためには、データを低遅延で送信できることに加え、多数の端末を安定して同時接続できる通信手段が求められる。こうした観点から渡辺氏は、以前よりローカル5Gに注目していた。
しかし、ローカル5Gにも課題があった。その1つは、端末側の対応状況だ。カタログスペック上はローカル5G周波数対応を謳っていても、実環境では停止が頻発するなど、想定通りに動作しなかったという例は少なくない。「エンドユーザーが求める品質水準は高く、実運用に耐えうる安定性が確保できなければ、現場の要求には応えられません」(渡辺氏)
2つめは端末サイズの問題である。フルスペックのローカル5G端末は消費電力やアンテナ構成から小型化に限界があり、AMR内部への搭載が難しい。AMRの外部に露出する形で端末を取り付けると、周囲の設備や搬送物と物理的に接触するリスクがあり、移動時の動作に支障を来す恐れがある。
3つめはコストだ。ローカル5Gは普及に伴い低廉化が進んできたものの、Wi-Fiなど他の無線方式と比較すると依然として高コストであり、導入をためらう理由の1つになっている。
既存ローカル5Gの課題をRedCapでクリア 端末の低廉化もカギ
こうした状況にマッチするのが、5GのIoT向け規格である5G RedCapだ。
5G RedCapは、3GPP Release 17で規定された5Gの拡張仕様の1つで、IoTや産業用途を想定して機能を最適化した新しいカテゴリーだ。既存の5G NRをもとに、帯域幅やアンテナ構成、変調方式などを用途に応じて簡素化することで、消費電力や端末コストを抑えられる点が特徴だ。国内でも2025年から商用展開が始まっている。
フルスペックの5G端末と比べると、帯域幅やピーク速度、送信出力などは限定されるが、最大スループットは理論値で下り220Mbps、上り100Mbpsとされている。センサーデータの送信や画像・映像伝送など、一定の通信容量を要する用途にも対応可能な水準だ。AMR制御に求められる低遅延かつ安定した通信を確保しながら、端末の小型化や実装の容易さを実現できる点もポイントといえる。また、既存のローカル5G環境上で運用できるため、構築済みインフラを活かしながら用途を広げる手段としても有効だ。
そこでIndustry Alphaは2026年2月、5G RedCapでAMRを制御する実証実験に取り組んだ。コア一体型5G基地局を提供するFLARE SYSTEMSも参画し、同社のソフトウェア基地局「FS2-L5G-1」を使用した。FS2-L5G-1は3GPP Release 16/17に対応しており、5G RedCapへの適応も確認済みだ。
端末にはネクス製のUSBドングル型5G RedCapデバイスを採用した。LTEドングルを流用したこの端末は従来のローカル5G端末と比較し非常に小さく、物理的な接触のリスクが大幅に低減した。
実証実験の体制整備をバックアップしたのが、電気通信大学の技術移転機関(TLO)であるキャンパスクリエイトだ。同社は東京都の「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」の令和5年度開発プロモーターに採択されており、同事業の枠組みの中でIndustry Alphaを支援。ローカル5Gの基地局・端末の選定および免許申請、実証実験等のサポート等を提供した。
キャンパスクリエイト 専務取締役の須藤慎氏は、「Industry Alphaとともにローカル5Gを活用して検証を進めてきましたが、通信手段として端末にCPEを用いることに課題を感じていました。AMR制御への5G RedCap適用は2024年から検討していましたが、ネクス製ドングルの商品化によって実装の見通しが立ち、実証実験の段階に進むことができました」と語る。
実証実験はIndustrt Alphaの開発拠点で実施。Industry Alpha製AMR「Kagero」の内部にネクス製RedCapドングルを組み込んだ。AMRとの接続はドングルの有線LANポート経由で行った。FLARE SYSTEMSのローカル5G基地局を介してFMSサーバーと通信し、FMSからの指示に基づくAMR制御を検証した。

実証実験の構成
実験はAMR単体の制御を対象として行い、想定通りに動作した。FLARE SYSTEMS 取締役 営業本部長の松浦晋之介氏は、「既存のローカル5GやWi-Fi HaLowなどの他の通信方式で実験したときと同様の検証を行いましたが、5G RedCapのハードウェア的な特性を把握できたことが大きな収穫でした」と述べる。同社のコア一体型基地局はローカル5Gで多数の導入実績があるが、今回の検証により、RedCapを含めた運用イメージを具体的に確認できたという。
また松浦氏は、「ネクス製ドングルが低価格であることが大きなメリットになりました。今後さらに小型化が進み、最終的にはモジュールとアンテナの形でAMRなどの機器に組み込むことが期待されます」と続けた。












