ピコセルでエリアを作り直す
打開策の1つとして、KDDIは「ピコセル」の展開に注力している。これは、電柱やビル壁面などの低い場所に超小型の基地局を設置し、不感地対策や容量拡大に利用するというものだ。
KDDIは、LTEのサービス開始当初からピコセルをビル陰などの不感地対策に活用してきたが、最近では都心の容量拡大の手段として使われることが多くなっているという。
電柱に設置されたKDDIのピコセル基地局。2.1GHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯の3バンドに対応可能。サムスン製 |
吉田部長は「通常のマクロ(大)セル基地局のカバーエリア内のトラフィックが高い場所に同一周波数のピコセルを配置するだけでも、一定の容量拡大が見込める」と説明する。だが、この方法はマクロセル基地局との干渉のため効果が限定される。
そのため、「新宿の一部地区など特にトラフィックの集中する場所では、2GHz帯の基地局の電波を止めてピコセルでエリアを作り直している」という。これは効果が非常に高いが、かなり大掛かりな取り組みになってしまうのが難点である。
そこで、KDDIが期待をかけているのが、大セル基地局とピコセルを連携させることで干渉を回避し、手軽に容量拡大を実現するeICIC(Enhanced Inter-Cell Interference
Coordination)の導入だ。eICICは、LTEの進化版LTE-Advancedの要素技術の1つで、2014年に対応端末の登場が見込まれている。
もう1つ、おそらく当面の容量対策の決定打になりそうなのが、KDDIグループのUQコミュニケーションズが昨年10月に開始した下り最大110Mbpsの「WiMAX 2+」の活用だ。
KDDIはすでにUQのWiMAX回線を活用したスマホを発売しているが、WiMAX 2+はLTEの規格の1つTD-LTEと互換性を持つシステムを使っているので、LTEと一体運用できる利点がある。アップルはiPhone 6をUQと同じ帯域のTD-LTEに対応させると見られているので、その受け皿にもなる。
KDDIはこれらとWi-Fiへのデータオフロードを組み合わせることで、データトラフィックの増大に対処しようとしている。