携帯電話3社の中でLTEの展開を最もうまくiPhone 5s/5cの販売に結び付けているのがKDDIだ。最大の訴求ポイントとなったのが、LTEの主力バンドとして展開する800MHz帯の「つながりやすさ」である。
携帯電話用の周波数帯の中でも800MHz帯や900MHz帯などの低い帯域は、(1)減衰が少なく電波が遠くまで飛ぶ、(2)建物の陰にも回り込み、つながりやすい特徴を持つことから、その希少性とあわせて「プラチナバンド」と呼ばれる。
KDDIは3G携帯電話においても比較的狭い電波幅で運用できる北米規格のCDMA2000方式を800MHz帯で展開をしてきたことにより、比較的広い帯域が必要なW-CDMA/HSPA方式を高い周波数帯域の2GHz帯で運用するドコモとソフトバンクよりも、つながりやすいという評価を得てきた。
LTEの展開でも、電波が細切れに割当てられていた800MHz帯において、周波数再編で15MHz×2、つまりW-CDMA/HSPAが3波(3車線)運用できるまとまった帯域に整理されたことを活かし、このうち10MHz×2、2車線分の帯域をLTEに使って2012年秋に下り最大75Mbpsのサービスを開始した。
さらに、KDDIはすでに実人口カバー率99%超のエリアを構築している800MHz帯の3G基地局設備を有効活用し、2013年3月末までに実人口カバー率96%のエリアをLTEで一気に整備してしまった。下り最大75Mbpsの高速通信が広いエリアで使え、しかも「つながりやすい」――これがKDDIのiPhone 5s/5cの大きな差別化ポイントとなったのである。
図表 KDDIのLTEネットワーク展開(クリックで拡大) |
LTE基地局数は、総務省ホームページの無線局情報検索から得られた2013年11月23日現在の免許数。利用開始前の局も含まれる。同一局が複数の帯域幅で免許を得ている周波数帯などでは帯域幅別局数の合計が実際の局数より多くなるため累計を出していない。 |
KDDIはMNPの転入超トップを昨年12月まで28カ月連続で維持するなど極めて好調だ。要因としては、料金施策をはじめとする販売戦略の効果はもちろんだが、ネットワーク品質がその基盤になっていることは確かだろう。