【UCサミット】収益を生むコラボレーションとは?――データクラフトのナギ・カシナドゥニ氏

グローバルに事業展開するITソリューションプロバイダーであるデータクラフトのナギ・カシナドゥニ氏がユニファイドコミュニケーション(UC)を取り巻く世界の市場環境と、コラボレーションの経営的効果について講演した。

「コラボレーションによる収益性の向上には、すごいものがある」――。2010年7月6日に開催された「UCサミット2010」において、「“コラボレ-ション” ユニファイドコミュニケーションのグローバル動向と先進事例」と題して講演を行ったデータクラフトアジアのナギ・カシナドゥニ氏はこのように語った。

データクラフトは、従業員数1万1000名以上、売上高40億米ドル、全世界151カ国で事業を展開するディメンジョンデータグループの1社で、ITインフラの計画・構築・保守運用を手がけるソリューションプロバイダーだ。ディメンジョンデータの本社は「まさに今、サッカーのワールドカップで世界を沸かせている南アフリカにある」という。

同氏は、ユニファイドコミュニケーション(UC)を取り巻く市場環境について、特に以下の点が注目だと語った。まずは、プライバシーや個人情報の意味が変わりつつあることだ。「例えば多くの方がEメールや携帯端末を使っているが、仕事のメッセージもあれば、プライベートのメッセージもある。フェースブックの使われ方が、まさにそのことを体現しているが、プライベートとパブリックの境界があいまいになってきている」。さらに、ワークライフバランスも変化し、かつてのような9時から5時までが仕事という形から「どこまで仕事で、どこまでプライベートなのか、その境界線もあいまいになってきている」と、社会的環境要因が大きく変化しているとした。

データクラフト

一方、ベンダー側の状況や技術動向についても、例えばシスコがソーシャルアプリケーションに力を入れたり、グーグルがモバイルに進出したりと、各ベンダーの注力分野が変化。さらに、アバイアのノーテル買収、HPの3COM買収、シスコのタンバーグ買収と市場の統合が進展しているだけでなく、クラウドコンピューティングも登場し、選択肢が増えると同時に複雑性が増大しているとした。

次に、カシナドゥニ氏が触れたのは、日本のUC市場についてだ。IDC Japanが4月5日に発表した「国内ユニファイドコミュニケーション市場予測」を引き合いに出し、「日本におけるUC市場への期待値はきわめて小さいと言わざるを得ない」と指摘。だがその一方で、会社から支給されようがされまいが、従業員はUCの技術を使うようになっていくという。

下のスライド写真は、ディメンジョンデータがグローバル規模で行ったユーザー調査の結果だ。同調査ではユーザーに対し、「業務で利用している技術はどれか?」と質問。オレンジの部分が会社支給ではなく、ユーザー所有のツールを使っている人の比率を示している。例えば、IMの場合、半分近くの人が会社支給ではなく、ユーザー個人のIMを業務に利用していることがわかる。カシナドゥニ氏は「新しい、もしくは破壊的な技術はユーザーによってもたらされる」としたうえで、「こうした状況は、企業にとってかなり深刻な懸念事項だ」と指摘。企業として何らかの対応が必要とした。

ユーザーが業務で利用しているUC技術
ユーザーが業務で利用しているUC技術。ブルーが会社支給、オレンジがユーザー所有を表している

続いて、スライドに映し出されたのは、カシナドゥニ氏自身が韓国の空港で撮影したという1枚の写真だ。空港のカウンターに並んでいる最中も、ノートPCを抱えながら電話をしている1人の男性が写っている。同氏は聴講者に対し、「自社のスタッフに、このようにしてまで仕事をしてほしいと思いますか。それとも適切なシステムを提供することによって、社員の仕事のやり方が改善されるような状況を生み出したいと思いますか」と問いかけた。

「このようにしてまで、自社のスタッフに仕事をしてほしいですか」とカシナドゥニ氏
「このようにしてまで、自社のスタッフに仕事をしてほしいですか」とカシナドゥニ氏

カシナドゥニ氏はこのようにUC市場を取り巻くさまざまな状況について述べた後、これら1つ1つの課題の解決策となるのが、「コラボレーションだ」と説明。コラボレーションとは、サイロ型に別々になったコミュニケーションツールを統合することだという。そのうえで同氏は、コラボレーションに向かって進んでいくには、しかるべき戦略が必要だと指摘。「ただ、統合するだけではいけない。足りないのはロードマップであり、アーキテクチャだ。技術だけでコラボレーションが実現するわけではない。企業文化やその目的と合致したものでないといけない」と語った。

最後に、カシナドゥニ氏はコラボレーションの事例を紹介。その1つがプロクター&ギャンブル(P&G)の例だ。世界を代表する企業である同社はタイム・トゥ・マーケット――製品を市場に出すまでの時間をできるだけ短くするために、シスコのテレプレゼンスを40台導入。「ビデオコラボレーションスタジオ」と名づけ、各部門・各地域のさまざまな人間がすぐにミーティングに集まれるようにしているという。例えば、スペインで洗剤の新製品を出す際、中東での成功例を手本にしたいといったケースだ。「P&GのCEO兼会長は『世界で最もコラボレーティブな会社にしよう』と述べている。『オムツや石鹸で世界一になろう』ではない。コラボレーションは現実的なソリューションであり、経営に変革をもたらしながら、企業の活動を高めていくためのツールだ」とカシナドゥニ氏は講演を締めくくった。

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