<特集>ネットワーク未来予想図2026AIデータセンター新章 「分散」の次に来る「横断」

電力と容量の制約を超えてデータセンター(DC)インフラを拡張するには、分散化の先を見据えた技術開発が不可欠だ。DCの“横断”を意味する新コンセプト、スケールアクロスが分散DCの統合活用への道を拓く。

分散型AI支えるディープバッファ

通信ネットワーク業界では2026年以降、分散DCの連携・統合、スケールアクロスを実現するための技術開発が大きなテーマとなろう。山本氏は、「ネットワーク接続性、特に低遅延性が確保されない限り、DC事業者もユーザーである企業も地方拠点に行くメリットを見出しにくい」と指摘する。

DC間接続に使われるルーティング/光伝送技術には大容量化と低遅延化に加えて、信頼性やコスト効率、省エネ性の向上といった多様な要求が突きつけられる。これに応えるための技術開発の取り組みを見ていこう。

ルーティングで新たな方向を示したのが、シスコシステムズだ。同社はこの11月に、スケールアクロスによるAIクラスターをターゲットとした新コアルーター「Cisco 8223」を発表した。インターネットインフラストラクチャ事業 事業部長の小久保依美氏は、「AIクラスターはわずかなパケットロスでもジョブ完了時間に深刻な影響を与えるほどパケットロスに敏感。だから、低遅延かつディープバッファを持つ高性能な仕組みを備えた」と説明する。

シスコシステムズ インターネットインフラストラクチャ事業 事業部長 小久保依美氏

シスコシステムズ インターネットインフラストラクチャ事業 事業部長 小久保依美氏

8223に搭載される最新世代のシリコンチップ「Silicon One P200」は、大容量バッファー(メモリ領域)を持つことで急激に流入するトラフィックバーストを一時的に吸収し保持するディープバッファ機能を備える。これにより、AI学習時に発生する膨大なトラフィック急増を吸収し、遅延を抑える。

シスコはAIクラスター向けのこのチップを今後、DC向けスイッチにも展開する計画だ。Cisco 8223の当面のターゲットはハイパースケーラーだが、「ディープバッファの技術やIOS-XRでの提供も含め将来的に、それ以外の顧客にも広がっていくだろう」と小久保氏は展望する。

また、ルーターの高密度化/省エネ化も加速する。3RUで51.2Tbpsの容量を持つCisco 8223は、同性能・容量の従来製品(モジュラー型)と比べてラックスペースを7割、消費電力は65%削減しているという。この観点でのベンダー間競争も激化しそうだ。

分散AI学習を実現するための技術開発は、NTTも力を入れている。

NTTドコモビジネスは2024年から、IOWN APNで接続した複数DCのGPUサーバーを使ってGPUクラスターを構成する「GPU over APN」の実証を重ねてきている。2025年には接続距離を約3000kmまで伸ばした疑似環境でのAI学習時間を測定。単一DCで行ったAI学習とほぼ同等の性能を確認した。

NTTは、IOWN APNで接続した日本と台湾のDC間で、先述のDCIコントローラーを用いたリソース制御にも成功している。国・大陸をまたいだDC連携・統合ももはや夢ではなくなりつつある。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。