GNN活用し汎用AIで世界3位
RecSys Challengeは、推薦システム分野の最高峰の国際会議RecSysConferenceで開催されるコンペで、2025年9月開催のRecSys Challengeにはサービスイノベーション部の橋本雅人氏ら6名のチーム「SenseLab」が初参加した。与えられた課題は、ECサイトでの購入予測や離反予測など、様々な目的に使える汎用的なユーザープロファイルの作成。目的ごとにAIを開発するとコストがかかるため、1つのプロファイルを使い回してAI開発を簡略化する手法が求められた。
ドコモの顧客データを分析して顧客の興味関心や行動を理解し、マーケティングに活用するためのAI基盤「docomo Sense」に関わるメンバーで編成しており、課題との親和性は高かったと橋本氏は振り返る。
チームは、役割の異なる3種類のAIを組み合わせる手法(図表2)で課題に挑み、世界3位に入賞した。
図表2 「Recsys Challenge」での提案内容

「ドコモでは以前からGNN(グラフニューラルネットワーク)を活用したレコメンドエンジンの研究開発を進めており、その知見を応用・発展させることができた」と橋本氏。GNNは、ユーザーと商品、商品同士の複雑な関係性をネットワーク構造として捉えるAI技術で、例えば「この商品を買った人は、あの商品も買っている」といった関連性を学習し、より精度の高い推薦を実現するという。
ルール違反判定で金メダル獲得
Kaggleは、世界最大級のAI・データ分析のオンライン学習プラットフォームだ。Kaggleでは常に複数のコンペが開催されており、2025年7月開催のコンペ「Jigsaw—Agile Community Rules Classification」でNTTドコモ社員を含むチームが金メダルを獲得した。
同コンペの課題は、オンライン掲示板「Reddit」のコメントがコミュニティルールに違反しているかを判定するというもの。各コミュニティには広告掲載の禁止などの独自ルールが設けられており、投稿コメントがこれらに違反するのかを高精度で判定する必要があったという(図表3)。
図表3 Kaggleの「JigsawーAgile Community Rules Classification」コンペ課題

データプラットフォーム部 主査の鈴木明作氏は、「大規模言語モデル、埋め込みモデル、分類モデルという特徴の異なる3タイプのAIモデル計13個を活用した」と説明する。具体的には、まずテストデータを用いて、実際に学習を続けながら精度を高めるオンライン学習を実施。次に、13個のモデルの予測結果を組み合わせて精度を向上させるアンサンブル学習を行った。さらに、AIが予測した結果を新たな学習データとして追加する擬似ラベル手法や、ルールごとに特化したモデルを作成するなど、工夫を重ねたという。
鈴木氏は「コンペに参加することで様々な問題設定のデータに触れることができ、学んだ多様な視点は、実務での課題解決に直結する」と語る。
宮木氏は、コンペ参加の意義をこう総括する。「世界の大企業がどの方向を見ているのかが分かる。また、課題をどう解決しているのか、そのソリューションをキャッチアップすることで、自社内での新しい技術開発やサービス改善につながる」
こうした成果は、個々の社員の努力に加え、組織として戦略的にコンペ参加を支援してきた結果だ。実際、RecSys Challengeで開発したGNN技術は「docomo Sense」のレコメンドアルゴリズムの改善や各種行動予測に活用され、広告配信の精度向上にも貢献している。
これらの取り組みは、国内企業のAI活用のモデルケースの1つとなりそうだ。









