クラウドPBXを全面採用し、PBX/ビジネスホンは撤廃
早くもiPhoneを先進的に使いこなしているイマックビーシーだが、「ひっきりなしにかかってくる」という電話自体も実は今回、大きな進化を遂げている。その立役者は、クラウドPBXサービス「U3 Voice(ユーキューブボイス)」とケータイ内線ソリューション「KDDI ビジネスコールダイレクト」だ。
クラウドPBXは、PBX機能をクラウド型サービスとして提供するもの。ITシステムのクラウド化は進展しているが、PBXについては、まだまだオンプレミスが多いのが現状である。しかし、松田氏には、最初から“クラウド”という選択肢しかなかったようだ。「iPhoneはもはや“電話”ではなく“PC”です。PCとしての機能を充実させていくことが大事ですが、それにはクラウドしかありません」
イマックビーシーは、新宿本社と有明スタジオに加えて、大阪・神戸・横浜・名古屋・福岡にショールームを構えるが、国内の全拠点がクラウドPBXに移行しており、コールセンターを除いてPBXやビジネスホンは残っていない。
また、あわせて導入したKDDI ビジネスコールダイレクトは、auの携帯電話/スマートフォンを内線化できるサービスだ。外出先でも携帯電話/スマートフォンで内線通話が定額で行える。
クラウドPBX+FMC+iPhoneによる3つの効果
イマックビーシーは、iPhoneにこの両サービスを組み合わせることで、次の効果を実現した。
1つは、いつでもどこでもiPhoneで内線通話が可能になったことによる、コミュニケーションのさらなる迅速・円滑化だ。ちなみに、イマックビーシーでは今回のiPhoneとクラウドPBXの導入を機に、固定電話機の台数も大幅に削減。「将来的には、フリーアドレスや固定電話機の全廃も視野に入れています」と松田氏は話す。
2つめはコスト削減である。導入したクラウドPBXは、内線通話用のデータ回線が不要であり、KDDIの光ダイレクト回線のみで利用できる。イマックビーシーは従来、拠点間は内線化しておらず、外線で通話していた。しかし今回、データ回線の追加によるコスト増なしに、拠点間内線を実現できた。また、前述の通り、iPhoneについても内線通話は定額になっている。さらに松田氏がもう1つ挙げるのは、PBXの設置スペースの問題だ。PBXの設置には結構なスペースが必要だが、そのスペース代も削減できた。
そして、3つめは、PBXの運用保守の負荷がなくなったことである。「GSTVは、テレビやWebといったバーチャルな世界で基本的にビジネスを行っています。つまり、ネットワークがすべて。ですから、運用保守はできるだけ外部にアウトソースし、自社のシステム部にはもっと戦略的な部分に専念してほしいと考えているのです」
とはいえ、もちろん松田氏は運用保守を軽視しているわけではない。イマックビーシーの業務における電話の重要性は、ここまで紹介してきた通り、大変高い。電話がストップすればビジネスも止まりかねないが、そこで評価したのが「責任分解点がないこと」だ。システム障害時には、責任の所在をめぐる議論が先行し、トラブルシューティングが遅れるケースがよく見られる。しかし、KDDIは、回線サービスとクラウドPBXを1社でワンストップ提供しているので、そうした心配は無用である。
iPhoneは全国のショールームにも配布されており、iPhoneで内線通話を行っている | iPhoneを内線端末として導入したことから台数はかなり減ったものの、固定電話機もまだ健在。ただ将来的には固定電話機の全廃も検討しているという |
「GSTVの夢を実現していくための、基礎となるプラットフォームができた」。松田氏は今回のiPhoneとクラウド型PBXサービス導入について、こう位置づけたうえで、次のように続ける。「あとはiPhoneの上に、どれだけの夢を載せていくことができるか。ショールームでの顧客サービスに利用したり、iPadも導入してペーパーレス会議を実現したり……」。松田氏の頭の中では、すでにいくつものプランが具体的に動き出しているようだ。