AIは“グループ力”で差別化
――2025年10月には、独自LLM(大規模言語モデル)・tsuzumiをアップグレードした「tsuzumi 2」をリリースされました。
星野 1台のGPUで稼働する軽量さから、先代モデルのtsuzumiを発表した当初から引き合いは多くありました。新モデルをリリースしてからは、「tsuzumi 2を使ってこんなことをしたい」という具体的な相談がより増えてきました。
tsuzumi 2は先代モデル同様、ベースとなるモデル設計や学習プロセスをNTT側でコントロールしているため、高い信頼性を備えている点が特徴です。また、モデルサイズが極端に大きくないことから、オンプレやプライベートクラウドでの運用にも適しています。万能型のLLMというよりは、特定の業界・分野に特化した活用に向いており、金融や教育、自治体など幅広い業界から関心を寄せていただいています。
――LLMの開発は米中が先行し、国内の通信事業者も独自LLMの開発を本格化させています。どう差別化していきますか。
星野 我々が長年培ってきた日本語性能の高さはすでに確立されており、その特徴を活かしたいというお客様に“素材”を提供できる準備は整っています。ただ、LLMだけでお客様のすべての要望に応えることはできません。
NTTは通信会社でもあるので、分散配置された計算資源をつなぐためのネットワークはNTTドコモビジネスが、データ処理やAI基盤の整備はNTTデータが、それらをお客様の現場に実装・運用していくエンジニアリングはNTT東西が担当します。
つまり、LLM単体で勝負するのではなく、グループ全体でお客様が求めるAIを提供することが重要だと考えています。NTTグループに頼めば、必要なパーツを一式揃えてくれる─。その価値で勝負したいと考えています。こうした体制を基盤に、2027年度までにtsuzumi 2を含めた生成AI関連事業で5000億円規模のビジネス創出を目指しています。
――NTTグループ内では、AIをどのように活用していきますか。
星野 AIというと効率化の文脈で語られがちですが、通信会社にとってAIは、お客様に高品質なサービスを安定して提供するために不可欠です。
例えばアラームが発報されない「サイレント障害」が発生しても、通常時と比べてトラフィックに不自然な変化があれば、AIがそれを検知・通知できるようになってきました。数百台規模の装置でアラームが一斉に起こった場合も、人手だけでは到底対応しきれませんが、AIによって情報を絞り込むことで、原因特定から対応までを大幅にスピードアップできます。
また将来的には、退職したベテラン社員のノウハウをAIに学習させ、若い世代へ引き継ぐことも可能になるでしょう。AIの価値は単に人件費を削減することではなく、これまで実現できなかったレベルの業務やサービスを可能にする点にあると思っています。
こうした考え方は、通信業界に限らず、多くの日本企業にも共通する課題だと思います。私たちが実践例を示していくことで、より付加価値の高いサービスを生み出したり、これまで手が回らなかった領域に人を割り当てるといった動きが、他の企業にも広がっていくのではないでしょうか。ネットワークとAIを先進的に活用している企業として、こうした取り組みを会社を挙げて推進していきたいと考えているところです。









